Jigsaw puzzle《完結》






━━その日の夜



「アスラン!」

「アスラン、どうしたの。いきなり病院に来てくれだなんて…」

現れたのはアスランの父母パトリックとレノア。

「父上、母上…」

二人が来て肩の荷が下りたのか、体が少し軽くなった気がした。

息をついて立ち上がり、両親に向き直るアスラン。

その時、袖から出ている手に包帯が巻かれているのをレノアは目敏く見つけた。

「アスラン…貴方その手、どうしたの!」

ギクリとばつが悪そうな顔で「何でもないです」と指摘された手を後ろに隠す。

「…ならば何故、私たちを此処に呼んだのだ」

パトリックは包帯の事には触れずに、呼び出した理由を問うた。

隠すということは、それが自分達を呼んだ理由ではないと解ったから。


「彼女を診ていて欲しいからです」

彼女?とレノアが聞こうとした時、後ろから医者らしき男性に付き添われて陰鬱な表情をした女性が現れた。

それは━━

「カリダ?!どうして、此処に?」

「レノ…ア…?」

驚きの顔を見せるカリダの瞳には、あの時の狂気は消え失せ、今は娘に対する後悔の念しかなかった。

「レノアッ!!レノア、私…どうしたら良いの!?キラが…あの子に何か合ったら、私…わたしッ!?」

「カリダ?!どうしたのカリダ、落ち着いて」


自分に泣いて縋る親友の背中を優しく撫でながらレノアは息子を見る。

「母上、事情は後から説明します。だから、今はカリダおばさんとうちで一緒にいてあげて下さい」

一見、冷静に見えたアスランだったが、その顔には疲労の色があった。

「……分かりました」

今は聞くべき時ではない。

状況を見てレノアはそう悟り、カリダを連れて静かにタクシーに乗り込んだ。


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