Despair of truth






 自分が知っているパトリック・ザラは強面だがとても優しい人だ。

 妻のレノアはもちろん、息子であるアスランにも不器用ながらも愛情を見せていた。


 そんな人が最愛の人を亡くして正気いられる筈がない。

 その時のパトリックさんの気持ちを思うと、胸が張り裂けそうなくらい苦しくなる。


 周りに支えてくれる人はいない。

 立場上も、そんなことを言っていられる状況でもなかっただろう。


 そして母を喪って一人、悲観に暮れているであろう息子に、月並みな慰めなど意味のないことだと分かっていたのだ。

 だから、家には帰らず仕事に没頭した。
 戦争を早期に終結させるために…

 もうこのような悲しみを増やさないために…


 アスランがZ.A.F.Tアカデミーに入ると言った時も、予想はしていたのだろう。

 だが、その時も何より息子の気持ちを一番に汲んであげたのだと思う。

 でも、それと同時に自分の立場が反対することを許さなかった。


 戦争が長引いていき、次第に孤独感に苛まれて

最後は……


 その最期はアスラン達に看取られたと聞いている。


 おじさまは、やっと自由になれたのかも知れない。

もう誰も恨まなくてもいい。誰も殺せと命令しなくてもいい。


もう…苦しまなくてもいい━━


(パトリックおじさま……。どうか、天国でレノアおばさまと幸せに…)




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