Innocence《完結》
静かな海のほとりを歩いていると、そこには先の戦争の爪痕が色濃く残っていた。
そしてそれは空━━宇宙にもあった。
見上げれば無数の星…いや、MSの残骸が流星となって今でも降ってきている。
ザアァァ━━━
波の音しか聞こえてこない浜辺で、俺達はただ無言で空を見続けた。
「カガリさんは…」
「えっ」
いきなり沈黙を破られ、アスランは聞き返す。
「カガリさんは、お仕事ですか?」
「あぁ、来る直前にな…。終わらせたら直ぐに来ると言っていた」
「…そうですか」
「……」
また沈黙がその場を支配する。
だがその空気は、アスランにとって不快なものではなかった。
それは彼女の持つ雰囲気がそうさせているのかもしれない。
「アスラン、お聞きしてもよろしいですか?」
「何をですか…?」
ラクスと話しているとごくたまに昔の━━婚約者だった頃のように敬語で会話する癖が出てしまう。
その事に思わず苦笑する。
しかし、ラクスの次の言葉にアスランの顔は強張ってしまう。
「アスランは何故、プラントへお戻りにならなかったのですか」
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