Innocence《完結》




「ッ!!?」

脳裏に懐かしい亜麻色の髪がよぎる。

(そんな筈ない!キラは、彼女はまだプラントで眠って…)

「アスラン…?」

どうした?と近距離から俺の様子を心配そうに見つめるカガリの顔に、少しだけキラがダブって見えた。

最初に出逢った時にも感じたことだが彼女の顔立ちは、どことなくキラと似ている。

…性格は正反対だけどな。

尚も呼び掛けるカガリに大丈夫だと笑って見せれば安心したように離れていく。

「そうだ!ラクス、残りの薔薇は何て言う意味なんだ。この赤に白斑のとか」

「ぁ…これは━━「あ!アスランいた!」

「おそいよ!」

「カガリもおそいー!」

突然、暗闇から次々と現れて来た子供たちに口々に言われて、本当に長い間、自分を待ってくれていた事が分かってアスランは心底申し訳なく感じた。

だから迎えに来てくれた子達一人一人に膝を折ってごめんなと謝っていきながら、本当に今日の俺は謝ってばかりだなと改めて苦笑してしまう。

「早く早く!みんな待ってるんだよ」

「カガリも早く行こうよ」

無数の手に引かれて俺とカガリは急かされるように家に連れていかれた。

「あらあら~vV」

子供たちに連れていかれる二人の後ろ姿を見てラクスは苦笑した。

ケーキやご馳走を前にしてただ待っているだけというのは、子供たちにとって苦痛以外の何物でもなかっただろう。

「おねえちゃんも早くー!」


自分にも催促の言葉を貰い、ラクスはまた笑った。

「すぐに行きますわ」

そう言えば、手を大きく振って「絶対だよー!」と念を押してからアスラン達を追い掛けて行く。

その子の後ろ姿を見送ってから、ラクスはゆっくり歩きながら先ほどのカガリの言葉を思い出していた。

『残りの薔薇は何て言う意味なんだ。この赤に白斑のとか━━』

「……」

色取りどりの薔薇の中でも一際目を引く斑模様。

ラクスはその薔薇を見て思わず眉を顰めた。

赤に白斑の薔薇。
この薔薇が持つ意味は…。


“戦争・いさかい”


「……」


(一体、あの薔薇の贈り主は…何を)

「こらぁー!まだ食べるなあー!!」

「「えぇ~~!」」

家の前まで来ると聞こえてきた賑やかな子供の声と元気なカガリの声。

その優しい空気に、知らず知らずの内に入っていた肩の力が自然と抜けるのが分かった。

(…そうですね。これは、今優先して考えるべきことではありませんわね)

今日は彼の誕生した記念すべき日。

憂い事は明日でも良いのだから。


━━だから今日は、


「「アスラン、お誕生日おめでとう!!!」」


貴方がこの世界に生まれ、いままで生きてくれた事。
そしてこれからを皆で祝い、互いに喜び合いましょう。



『アスラン、おめでとう!』



━END━

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