Innocence《完結》
お前がいつまで経っても帰ってこないから迎えに来たんだ。
腕組みをしながら眉を吊り上げてこちらを睨む彼女。
カガリに言われて辺りを見てみれば既に暗闇。
ラクスと浜辺を歩いていた時よりも深く濃い闇が辺りを支配し、ポツンとある小さな月がその輝きを主張していた。
「ぁ……ι」
ラクスと別れて、どのくらいの時間、自分は回想に耽っていたのか。
カガリが仕事を終わらせて待っていたのだから、一、二時間は優に経っているのだろう。
「えっと…、すまないι」
もう口からは謝罪の言葉しか出てこない。
「……ま、しょうがない。今日はお前が主役だからな、許してやる!」
「は?…主役?」
快活な口調で許しを得たのは良いが、彼女の言葉の意味が分からない。
「…アスラン、お前。本当に気づいてないのか…」
「だから、何がだ?」
「…………ι」
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何を言っているのか分かっていないと言ったアスランの言葉と表情。
子供達があからさまな態度をとったが全く問題ないと、ラクスが言っていた。
確かにアスランのこの反応を見る限りでは本当に全然気づいてないみたいだ。
鈍い、鈍過ぎる…。
いや、知っていたが。
アスランとは会ってまだ一年と少ししか経っていないが、この男が妙な所で鈍くて抜けているのは分かってきた。
初めて逢った時もそうだ。
敵かもしれない奴を放置して目の前で眠りこけるんだからな。
流石の私でも、あれは呆れたぞ。
「いや、今更そんなこと言っても始まらない、か…」
「何ブツブツ言ってるんだ?ラクス達が待ってるんだろう」
「あ、こら!何一人で先に帰ろうとしてるんだ!」
迎えに来た私を置いて先に行くなあー!!と背中を向けて一人帰ろうとする彼に恨みを込めてタックルを噛ましてやった。
「ぅわあぁっ!!?」
案の定、間抜けな声とともにアスランは派手にコケてくれた。
その姿を見て最近あった色々な事が少しはすっきりしたような気がする。
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