Innocence《完結》
「キィラ~?どちら様だったのぉ?」
ヤマト家の玄関先で騒がしくしていると、中から母上と同い年くらいの女の人が出て来た。
「カリダっ!!」
母上はそのカリダさんの両手を握って、きゃっきゃと年甲斐もなくはしゃいでいた。
「えっ!レノア!? え?…ぇ、どうして此処にいるの」
「うふふ、カリダを驚かせる為に黙ってたの。大成功ねv」
驚かせる…って
いい年こいて何をやっているのですか貴方は!!
その叫びは俺の心の中で虚しく木霊するだけだった…。
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「でも本当に驚いわぁ、まさかレノアが月に来るなんて」
「私も来れるなんて思わなかったわ、偶然よvV」
二人が和やかに話す中、俺は何だか母上の話の内容に納得がいかなくて、出されたジュースをストローでぶくぶくと泡立てる子供染みた行動をとっていた━━と
「あすら?」
「ん?…////!??」
呼ばれて視線を下に向ければ、床に座ってソファーにいる自分を上目遣いで見上げてくる綺麗な綺麗な紫色の瞳と目があった。
「じゅーす、おいしくない?」
「へ?」
コテンと首を傾げて聞いてくるキラの質問が分からず、アスランも首を傾げて聞き返した。
「あすら、ぶくぶくしてたから、じゅーす きらい?」
キラの言っている意味は殆ど理解できなかったが、俺の子供染みた行動がキラの純粋な心を深く傷つけてしまったということだけは分かった。
「いや!違うんだキラ、ジュースは美味しいよ!うん」
慌てて泡だらけにしてしまったオレンジジュースを飲む俺を見て、キラは満足したのか、再びにこにこ笑ってくれた。
(……危ない。危なかったぞ、今のは! 母上なんかに気をとられている場合じゃない)
今は、こうしてキラと話せる絶好のチャンスだと言うのに何をやっているんだ俺はッ!!!
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