Innocence《完結》
母上の爆弾発言の後、呆れた俺は狸寝入りをしてたつもりが、いつの間にか本格的に眠ってしまっようだ。
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「━━ラン、アスラン。もうすぐ着くわよ」
「…つく?」
何処に…?と問い掛ける前に目が覚めた。
(…そうだ、確か俺は今、月に向かっているんだった)
まだ完全に覚醒しきっていない頭でゆっくり今までの事を脳裏に甦らせる。
「アスランってば、シャトルに乗っている間は、ほとんど寝て過ごしていた様なものね」
「………」
俺は反論出来なかった。
母上の言う通りだったからだ。
食事とトイレ以外はずっと寝ていたから(あくまでもフリだが…)
それがとても悔しかった。
月には三日程で着いた。
風景はあまりプラントと差異はなかった。
自然が多く、のどかな感じの場所。
でも新しい家は、プラントより幾分か小さかった。
だが、身を隠すにはこの位のほうがいいのよ、と母に諭される。
「??? そうなのですか?」
回りに同じような大きさの家ばかりが当たり前のようにあったアスランにとっては、その大きさが彼の中での普通だった。
生粋のお坊ちゃまであるアスランには、小さい家に住む事と身を隠す事がどうして結び付くのか分からない。
「さぁ!アスラン。荷物の整理は後にしてご近所に挨拶に行くわよ!」
妙に張りきっている母に“ご近所”ではなく“カリダさん”の間違いでしょうと内心で思っていたことは秘密だ。
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