いつまでも君を






 困ったことになった。

 オーブ国民の乗ったシャトルを無事地球に降下させることを見届けてからアークエンジェルを降りようと思っていたが、トールたちが除隊せずにこのまま地球軍に志願するというのだ。

 発端はいままで一般人だったフレイが自ら軍に志願したことから始まった。

 トールによると先遣隊と共に来ていたフレイの父親ジョージ・アルスター事務次官が乗っていた艦が何度も危険に晒されるのを目の前で見たことで、自分だけがのうのうと平和を享受していることに疑問を感じたのだそうだ。

 そのフレイの言葉に感化されたトールやミリアリア、婚約者を艦に残していけないサイ、自分だけ降りることに罪悪感を感じて残るカズイ。

 まさか、オーブ国民の彼ら(フレイ以外)が地球軍に入るとは思わなかった。
 だが自ら志願したというのなら自分にはどうしようも出来ない。彼らの意思を尊重するだけだ。

 心配だが、今はそれよりも重大な悩みの種が出来てしまった。


* * * *


 地球に降下したアークエンジェルはいま北アフリカの砂漠━━ザフト軍の勢力圏へと大きく予定のポイントを外れてしまっていた。

 それというのもラクスをアスラン達に還した後、体勢を立て直していたところにもう一度ザフトの襲撃があり、大気圏突入時ギリギリまでデュエルが戦闘を止めなかったため深追いしたストライクが重力に呑まれ、それを救うためにアークエンジェルは本来の軌道を大きく外れ降下してしまったのだ。

 …申し訳ないことをした。

 こんな事がなければ、彼等は何事もなくハルバートン提督の旗艦メラネオスと共にアラスカを目指していたはずだ。


「それで?あのお嬢ちゃんはどういう関係なんだ」

「関係…といわれましても。ヘリオポリスで出会って、避難シェルターが1人分しかなかったので譲ってあげただけなんですが…」

「ひゅー!かっくぃー」

「フラガ大尉、茶化さないで下さい。…彼女とは本当にそれだけなの?」

「はい……。多分ですが、あの時はどこもシェルターがなかったので心配してくれていたんじゃないかと…」

「いやはや、手荒い歓迎だね~」
「大尉!」

 地球に降下した後、情けないことに熱をだし数日寝込んでしまった。
 初めての命令以外の独断任務(キラはそう思っている)、MS戦、気の抜けない日々。
 知らず知らずのうちにキラの中で疲れが溜まっていたのかもしれない。しかも艦長たちには頼り過ぎてしまったと謝られてしまうし…。

 いや、いまは自分のことはどうでもいい。ここでの問題は……

 

「キラ!」
「ッ!!……カガリ…」

 アークエンジェルが降下した場所に、まさか(オーブに帰っているはずの)カガリがいるなんて…


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