ニ周年記念小説
それから━…。
『シン・アスカ、くん。明日の…』
『あ~、そうだな…』
(ぁ…)
『一緒、帰る…、いい…ですか』
『あ~、分かった…』
………してた。
ガックリと項垂れる兄を見て、漸く思い出したかとマユは溜め息が出た。
二人が一緒に帰る約束をした時、偶然にも自分はその場に居合わせていたのだ。
キラと全然話せなかったこともあり、その場で自分も約束に便乗させて貰ったことすら、この兄はすっかり忘れているようだ。
「もぉ~!お兄ちゃんったら、しっかりしてよぉ!」
「…しっかりしたくない」
「しっかり…堅固なさま。容易に揺らいだり崩れたりしないさま。堅実で、信頼できるさま。しっかり者」
また始まった…。キラ・ヤマトの言葉の意味講座。
へぇー、そんな意味もあるんだぁ、と会ったとき同様アイツを尊敬の眼差しで見ているマユ。
妹はすっかりコイツを尊敬しているようで、別れるときにもちゃっかり明日の登下校も一緒に行こうと約束をしていた。
(勘弁してくれよ……)
でも、俺のそんな悩みも思ったより早く解消された。
*******
「おはよう、シン。」
「……」
俺は目を疑った。そこには爽やかな笑顔を浮かべて俺に挨拶するキラ・ヤマト。
数日前までのたどたどしい言葉遣いと能面のような無表情はどこにいったのやら、眩しいほどの微笑みと流暢な朝の挨拶に俺は暫く呆けてしまう。
「シン…?なに呆けてるの。早くしないと遅刻しちゃうよ(ニッコリ!)」
「………」
誰だ、こいつ……?
そう思った俺は多分間違ってないと思う。
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