二万打記念小説



「何ぃ!アスランが戻ってこないだとぉ!!」

アスラン行方不明の報を聞いて怒りを顕にしているのは、騎士団隊長を務めるイザーク・ジュール。

すぐに熱くなる所が玉に傷だが、状況に応じて適切な判断を下せるとして若くして隊長に任命された期待の精鋭である。

「何故あの馬鹿から目を離した、ニコル!」

「僕にだって僕の仕事があるんですよ!四六時中アスランについていられる訳ないでしょう!」

「それがアイツの目付け役兼補佐の言うことか!!」

「はいはい、スト~ップ!そこまで」

デッドヒートする二人の言い合いに割って入ったのはイザークとかわらない年の青年。

「「ディアッカ!!」」

よっ!と軽いノリで現れた彼はディアッカ・エルスマン。ジュール隊の副隊長であり、イザークの幼馴染みでもある。

「ディアッカ!貴様ぁー!! 仕事もせずに何処をほっつき歩いていた!!」

「ちょっ!ちょっと待てよイザーク。ニコルから聞いてないのかよ」

「あぁ、忘れていました。イザーク、貴方の隊の方を一人借りましたから」

「人の隊の隊員を無断で借りるな!!馬鹿者がッ!!」

「それでディアッカ。馬鹿王子の行方は分かりましたか」

「それが……」と言いにくそうに差し出された報告書。それには件の王子らしき人物を“呪いの森”近くの街で見たというものであった。

しかも文章の締め括りにはその人物は街の人に呪いの森の情報を聞き、森の方向へ去っていったと書かれている。


「「……………」」


「ディアッカ、馬鹿王子の捜索隊を編成並びに装備を三時間でしろ!」

「了~解!」

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