二万打記念小説
第二章 森の化け物
ぐぅ~~…。
深夜、涼やかな虫たちの音色に混じって気の抜けた不協和音を奏でる虫が一匹。
(くっそぉ…、眠れない)
アスランの腹の虫が腹が減ったと催促しているのだ。
ぐう~~……きゅるるるぅ。
(くっそおぉ!!?////鳴るな!鳴るな鳴るな俺の腹ぁ!!主人の命令が聞けないのかぁ!!!)
ぐぅ~……。
尚も鳴るアスランの腹の虫。
そんな命令をしても鳴るものは鳴るのだから仕様がない。
「…~~、うるさーい!!!」
タッタッタ…、ガチャンッ!!?
「うるさいのは、お前だぁあああッ!!!」
一羽のふくろうが飛び立つほどの怒気を含んだ叫びと今にもドアが壊れるのではないかという破壊音と共にアスランの前に現れたのは━━。
「君はもうちょっと静かに寝られないの!」
自分の身長の倍はあろうかという巨大な亜麻色の毛並みのケモノ。
「おっ、お前。人の部屋に入るときはノックくらいしろ!礼儀を知らないのか」
「それはこっちの台詞だ!泊まらせてあげてるのに何その態度のデカさ!」
「当たり前だろう、俺は王子だぞ」
「関係ないね!王子さまだろうがお姫さまだろうが此処は僕のウチだ!」
な…な…、何なんだ、コイツはぁあ!!!
王子であるこの俺に歯向かうなんて無礼にも程がある!!
「…それに礼儀知らずって言うのは君みたいな人のことを言うんだよ」
「何だとぉ!! 俺のどこが礼儀知らずだと言うんだ!」
「君という『存在』そのものがだよ!!」
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