二万打記念小説




「ほぉー、俺に逆らうのかイージス?……そうか、お前は行かないのか」

何とでも言ってくれて構わない。

“呪いの森”に行くということは『死』にも均しい。

生きて帰れる保証もない。しかも、その森に入るのは世間知らずの王子一人と馬一頭。

道案内はいない。
ハッキリ言って『死の宣告』だ。


…だが、主はその『死の宣告』をもう一度してきた。


「馬刺しにして食うぞ…」

ビクッッ!!?

振り返れば、能面のように表情のない主の顔。

本気だ!!と、イージスは思った。

自分の主は、嘘や冗談が言えるほど器用な人ではないのをイージスは知っている。

「お前の代わりは幾らでもいる。ここで俺の命令に背いて“馬刺し”になるか、一緒に“呪いの森”へ行くか…早く選べ」


いま死ぬか、後に死ぬか。
どちらにしろイージスには、選ぶ権利などありはしなかった。

もし無事に帰れたら、仮病を使ってセイバーやジャスティスに今の位置を代わってもらおう。


でもその前に、本当に病気にかかるかもしれないが…。


そんな哀れな馬、イージスの心のうちを理解してくれる者は今この場にはいなかった。


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