二万打記念小説
第一章 我が儘王子
麗らかなお昼時。
城に通じる巨大な門の前に立つ一人の男は、その気持ちのいい陽気に思わず大きな欠伸をした。
つい先ほど食事を済ませ、さあ、やるかと交代をしたのは今し方。
だが、そのやる気も時間と共に襲ってくる眠気との格闘に代わっていくことになる。
心地好い風、寒くも暑くもない丁度良い気候。
小鳥たちは男を夢の世界へ誘う子守唄を囀る。
男は既に夢の世界への舟を漕ぎ出していた、そこに━━…
「アスラン様ぁあああーー!!!」
けたたましい叫び声と共にその静寂は破られた。
「いッ!!?」
男は驚いて尻餅をついた。
突然の事に声を出せないまま、振り返って叫び声の聞こえた己が護る門の遥か上に聳え立つ城を見上げる。
「な……なんだぁ?」
数秒前まで自分を支配していた睡魔のことも忘れ、男はただ唖然と城を見続けた。
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「ニコル様、何処にもおられません!」
「城内全て探しましたが、お姿は何処にも…」
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