隣のお姉さん




「こんにちは、シンくん」


今日、おれの家のとなりにひっこしてきたお姉ちゃんがあいさつに来た。


「こん…にちは//」

そのお姉ちゃんはとってもきれいで、おれはさっきまで妹によんであげていた絵本から抜け出して来た“妖精”かと思うほどだった。


「ぼくの名前はキラ・ヤマトです」

「ぉ、おれは、しん・あすかですッ!!」

よろしくね、と手をおれに向かって差し出す、きらお姉ちゃん。

俺は恐る恐るその手を握る。

あったかくて、やわらかい手だった。

「……///」

これが俺とお隣りのお姉さんとの、なんてことのない平凡な出逢いだった。






そんな出逢いから、十二年━━…



「行ってきまーす」

「シン、忘れ物はない?」

その言葉に立ち上がろうとした足を止めて、溜め息混じりに母を振り返る。

「…………ないよ。母さん、その会話もう止めてくれよ」

まったく、俺もうすぐ十六になるんだぜぇ。
いつまでも子供扱いするなよな。

━━と、ブツブツぼやいていたら後頭部に痛みと同時にスパーン!といい音が聞こえてきた。

「ッ~~~」

「そう言って昨日お弁当を忘れたのは、どこの誰よぉー」

「……マユ、お前なぁ…」

後ろにいたのは、やっぱり妹のマユ。

その手には学校指定の鞄。

あれで殴られたのか…。

頭部を摩りながら説教を垂れる妹を見る。

小さい頃は俺の後ろをヒヨコみたいにちょこまかついて来て、お兄ちゃん!お兄ちゃん!と可愛い奴だったのに……

いつの間に知恵をつけたのか、その口からは言葉が途切れることはなかった。


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