いつまでも君を



「少し狭いかもしれませんが…、この艦にはコーディネイターにあまり良い感情を持っていない方もいるので、貴女の安全のためにも多少の我慢はして頂くことになります。…それと「キラ…」
「ッ!!……」

「わたくしの事を、もう忘れてしまいましたか?」

 彼女に宛がわれた部屋に共に戻り、少しの注意喚起をしている時に呼ばれた己の名。

 いくらコーディネイターでもそれぞれコーディネイトされた事以外はナチュラルと変わらない。
 ラクスが自分の事を覚えてくれていたとしても、確かこんな感じの子だったと言うぼんやりとした記憶程度だと思っていた。

「……ラク、ス…。覚えていてくれたんだね」

「はい、勿論ですわ。キラ」


* * * * * *


「坊主!」 

「…フラガ大尉、お疲れ様です」

「お疲れさん。ピンクのお姫さまと話したってな」
「はい、少しですが…」

「あのお嬢ちゃんがプラントのお偉いさんの娘って事…聞いたか?」
「本人から…」

「お前はどうするのが良いと思う?」

「……何故それを僕にお聞きになるんですか…」

 彼女の処遇の決定権はラミアス艦長やフラガ大尉が持っているはずだ。パイロットとしての発言は許されることがあっても自分は他国民の一人でしかない。
 キラはフラガの真意が分からず、訝しげに問い返した。

「そりゃあ、お前さんが毎回いい案を出してくれるからさ」

「……ですが」

 確かにヘリオポリスからここまで多少の案は出したが、それも全て運が良かっただけのこと。
 オーブにいた時も兵法の本は何冊か学んだが、ほぼ独学といって良い。実践で揉まれた軍人にはとうてい敵わない。

「確かに最終的に決めるのはラミアス艦長だ。でもその艦長も最近なったばっかだし、イロハも習った訳じゃない。案は俺だって出すが、だけどそれを成功出来るかは俺たちの手にかかってる。…だからこそ何度も窮地を潜り抜けたお前さんの考えは聞いときたいんだよ」

 なるほど、そういうことなら

「……この後の進路はどうなっていますか?」

「どうやら第8艦隊先遣隊がこっちに救援に向かっている。おそらくもうすぐで合流出来るだろうな」

 ブリッジのクルーたちの喜びようを思い出してムウの顔も自然と綻んだ。

「艦隊…、大掛かりになりそうですね。ザフトに発見されていると考えても合流まで無事何事もなくとはいかないかもしれませんね…」

「アイツの隊なら、尚更見逃さないだろうしな…」

 苦々しげな顔で話すムウにキラは気になり聞いてみた。

「お知り合いですか?」

「…いいや、何回かやりあっただけだ」

 ただならぬ因縁がありそうでキラはそれ以上聞くのを止めることにした。

「大尉や少尉、艦長は穏便にクライン嬢をザフトに返還したいんですよね」

「あ? あぁ……ん~、ついでに逃げ切れれば言うことはないなぁ~なーんて「分かりました」」

「………へ?」

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