いつまでも君を



「すっげぇー可愛かったなあの子!」

「うん、ふわふわしてて、優しそうだったね」
 
「でも、ちょっと天然っていうか、空気が読めなさそうではあったな…」

 サイの言うことにカズイとトールは「あぁ~、確かに」と彼女が救命ポッドから出てきた時の事を思い出していた。




 中から出てきた少女は、唖然と見ているクルー全員の前を通り過ぎていこうとした。おそらく無重力で掴まる場所もなく止まらないのだろう。

そんな彼女の手をいち早く気づいてとったのがキラだった。

「何て言うか……、絵になってたよなぁ…」

「うん、なんかあそこだけ違う空間っていうのかな…」

「確かに、お似合いだったよな」

 少女の手を優しく引き寄せて、ゆっくりと着地させるキラ。
 ありがとう、とお礼を言う彼女に浅く足を引いてお辞儀を返すキラ。その時の二人がまるで姫と騎士のようにトールには見えた。
 
 まるで、映像の中でしか知らない映画のワンシーンのようだ。

「でも、そこからの「ここはザフトの艦ではありませんのね?」は僕、びっくりしたな」

「いや、それはあそこにいた全員がびっくりしてたと思うぞ」

「艦長たちも訳分かんないって顔してたもんなぁ」

 うんうん、と頷いていると、前から自分たち新米の面倒を見てくれている上司たちが近づいてきた。

「コラ!いつまでさぼってるつもりだ。お前達の方の作業は終わったのか」

「「「伍長!!」」」

 積み込み作業も程々に俺たちはピンクの髪の少女の話で盛り上がっていた。
 おそらく伍長たちの作業分は終わってこっちの作業状況を確認しに来たのだろう。

「(やばっ、全然終わってない!)伍長、すみませんいますぐ…」「チャンドラ伍長、トノムラ伍長。彼らは僕が終わるのを待ってくれていたんです」

「…キラ」
「お待たせ。ごめんね、いま終わったところなんだ」

 そう言われて振り向けば、確かに自分達の後ろにあったはずの積み荷は全て無くなっていた。

「そうか。じゃあ、作業はこれで終わりだ。お前達も各自、交代や休憩をしてくれ」

「はい、お疲れ様でした」

 帰っていく伍長たち見送ってから俺たちはキラに駆け寄った。

「ありがとなキラ」
「キラがやってくれてなかったら、僕たち伍長にめちゃくちゃ怒られてたよ」
「でも、1人で無理せずに俺たちに言ってくれてもよかったんだぞ」

 あの残りの荷物を所定の位置まで1人で運ぶのは大変だったはずだ。

「うん、ごめん。僕も考え事しながらやってたから…」

 あぁ~なる程な、とトールは思った。キラとはまだ短い付き合いだが、彼が深く考えを巡らすと周りが見えなくなるという事は知っていた。

だが、と各自の場所に行く後ろ姿を見て、他のことを考えながら出来る作業ではないのだと簡単に言うキラをトールは少し呆れた顔で見送った。

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