いつまでも君を



──アスランと再会した後も本当に色んなことがあった。


 彼はザフト軍の兵士となっていた。
 そして、おそらく地球軍とモルゲンレーテ社が秘密裏に造っていた新型機動兵器の奪取、或いは破壊を目的として来たのだろう。
 奪取を免れた最後の一機でなんとかザフトのモビルスーツを一時的に退けはしたが、今度はゼミ仲間であるトール達がシェルターに避難できずにいた。本土と救援の連絡を取ろうとしたが電波の乱れが激しく今はまだ無理だった。
 
 待っている間にアスランと再会した場に居合わせて気絶していた地球軍の士官が目覚めてまた一波乱。

 シェルターも全て閉まり、地球軍士官マリュー・ラミアス大尉の言う通りにするしかなかった。

(地球軍にこれ以上オーブの技術が漏洩するのは防ぎたいが、彼らの命には代えられない)

 オーブも救援隊を送るだろうが、それまでにヘリオポリスが無事だという保証はない。
仕方なく無事だった地球軍の戦艦アークエンジェルに皆と一緒に搭乗して今に至る。
 所々抜かして話している事もあるが、オーブの民である彼らと救命艇に乗っていた人達には何の実害もなかったので、僕にとっては些細なことだ。


「つくづく君は、落とし物を拾うのが好きなようだな…」

 呆れ半分といった感じで言われてしまう。
 
 無理もない。キラが避難民が乗っている物を回収してきたのはこれで二度目だ。それはため息の一つもつきたくなるというものだ。

「…すみません」

 苦笑で返したが、オーブの氏族の息子として自国の民を見捨てる等という選択肢は存在しない。

 アークエンジェルのクルーたちには申し訳ないが、これまでの自分の働きを鑑みても多少の目溢しは願い出てもいいとは思っている。

「開けますぜ」

 ヘリオポリスの救命艇と違ってどこの物ともしれない救命ポット。
 もしかしたら中にいるのはコーディネイターかもしれないという思いも捨てられず、その場の全員に緊張が走る。


『ハロハロ~』

そんな緊張感を崩したのは間の抜けた機械音とピンクの球体。

(…ロボット?)

『ハロ、ラクス~、ハロ~』

 ふよふよと無重力空間をさ迷うロボットに皆の視線が集中しているなか、救命ポッドの中から「ありがとう、ご苦労様です」と涼やかな少女の声が聞こえた。

(ッ!?…そんな、どうして…)

中から現れたのは、この場に不釣り合いなドレスを纏った長いピンクの髪の少女──キラの元婚約者『ラクス・クライン』だった。

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