whereabouts
なんでコイツまで此処にいるんだよ…。
キラ・ヤマトたちの教授のラボに着いたのはいいが、そこでまたしても俺はキラ・ヤマトと同じ位に嫌っている奴に出会ってしまった。
「誰?」
「あぁ、教授のお客さん。ここで待ってろって言われたんだと」
「ふ~ん」
どうやら俺以外のやつはアイツの正体に気づいていないみたいだな。
(でも、アイツなんでこんな所に…)
「トールこそ、誰?あの人」
「なんかよく知んねぇけど、キラの従兄弟だってさ」
「従兄弟…?へー、で、そのキラはもしかしてまた転んだの」
(また…はぁ?!)
「今回は違うって。まぁ、ちょっとした事故だな」
「ふーん?」
ラボにいた奴との会話に耳を傾けていた俺だが、話の内容がアイツから俺に対象が移ったことに居心地の悪さを感じて、キラ・ヤマトの手当てを無理矢理代わることで少しでもその目から逃れようとした。
「……なぁ、アンタ━いや、キラはよく転んだりするのか」
手当ての間の沈黙にも耐え切れなくなった俺は、さっきトールって奴たちが話していた信じ難い内容の話を確かめたくて、何気なく聞いてみた…つもりだ。
「え?」
「えぇ、そうなんですよ。キラったら目を離すと直ぐに転んでるんだもんね」
「ミ、ミリィってば////!!」
戯(じゃ)れ合う二人の少女たちを眺めてシンは自分がいた時の彼女たちを思った。
ミリィさん…は今よりいくらか落ち着いた感じはしたけど、雰囲気は変わっていないような気がした。
一番驚いたのはキラ・ヤマトの方だ。
キラ・ヤマトがよく転ぶなんて話は聞いた事がない。
耳に入ってくる噂は、また射撃でパーフェクトを出しただの模擬のナイフ戦で十人同時に相手をして無傷で息も上げずに終わらせただの、俺にとっては胸糞が悪いなる話ばかりだったのに。
「もう!ミリィの馬鹿////」
目の前にいる過去のキラ・ヤマトは別人だと言われても納得してしまう位にどこにでもいる普通の少女だった。
一体、これからの三年間で、何がキラ・ヤマトをあそこまで変えてしまったのだろう…。
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