夢の始まり〈中篇〉
なんだか、ぼーっとしてたキラさん。
心配になって声をかけたら「いたの…?」ってあんまりだろう…(泣)
やっぱり仕事がキツかったのか。
それとも俺ってその程度の存在?
少しは近づけたと思ったのは、俺の勘違いなのか…?
そうだとしたら、すげぇ落ち込むんだけど……。
「ゴメンね、シンくん。ちょっと考え事してた」
「…仕事、そんなに大変だったんですか…」
「え?ぁ…、うん、まぁ…少し」
何とも曖昧な答えが帰ってきた。
「あの…キラさんが今やってる仕事って、まだ終わりらないんですか」
キラの歯切れの悪い答えに、シンはもしかしてそう言うことなんだろうかと考える。
一段落ついたとはメールに書いてあったけど、終わったとは言ってない。
また暫くの間、キラに会えない日々が続くのか。
「あ、ううん。僕の仕事はもう終わったの」
何か大事がない限りは呼ばれないよ━━とキラが言い終わる前に体に軽い重みと締め付けが掛かってきた。
「へ…?…ぁ、シッ、シンくん?」
「本当ですか!明日は休みですか!!」
ぅ、うん…とシンの気迫に気圧されながらも頷けば、抱きしめられていた(らしい)腕が解かれ、小さくやった!と聞こえた。
「ねぇ…シンくん」
そんなあからさまに嬉しそうにされたら聞いて見たくなった。
まだ自分の気持ちも分からないけど…。
「シンくんは、僕の…」
もし、彼が肯定したら自分は何と返すのか。
「僕の事……す━━「好きですよ」」
「………ぇ…?」
その瞬間、二人がいるその場を沈黙が支配した。
━━音がない。
…まるで世界に誰もいないみたいだ。
緊張のあまり、シンはそれ以上は何も言わず、キラが答えてくれるのをじっと待っていた。
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