夢の始まり〈中篇〉




「…あ!」

遠くからこっちに向かってくる見知った姿にシンは思わず立ち上がる。

メールが返ってきた後、急いでまた返事を返した。
今モルゲンレーテ前にいます。一緒に帰りませんか?

返事はもちろんOK!


ただ、こっちに向かっている人影は一つではなかった。

黒髪の男の人が付き添っている。

何の話をしているのか。二人の顔は時折とても楽しそうで…キラさんは赤面して慌てているように見える。

(…なんか面白くない)

少し…いや、かなりかもしれないけど、それを見てたら今のこの距離みたいにキラさんが凄く遠い存在に感じてしまった。

何だろう…この気持ち。

すげぇ寂しくて、何か…何かイライラする。


「ヤッホー!シンく~んひっさしぶりぃー」

「へっ!?」

キラさんと一緒に来た黒髪の人が妙に馴れ馴れしく俺に話し掛けて来た。

誰だっけ?とジーッと顔を見て…、思い出した!

確か、キラさんの住んでた施設の前で会った父さんの同業者。

そう指差して答えれば、ピンポーン、大正解!シン・アスカに10ポイント!と訳の分からないポイントを貰った。

「じゃあ、後は若者同士で!ヤマトちゃんお疲れさん」

「…はぃ、お疲れ様でした。送って下さってありがとうございます…」

その人は前回同様、高笑いしながら自分の役目は終わったと言うようにさっさと俺の前から去っていった。

(結局、何しに来たんだ?あの人…)




*****


ひょっとして気づいてないの…?ヤマトちゃん。

シンくんの気持ちに…。


(え?シンくんの…気持ち…?)

うん、シンくんはね、ヤマトちゃんの事が…


「キラさん?」

「ひゃっ/// シ…、シンくん?」

「はい?」


「…いたの?」

「はい…(泣)」


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