夢の始まり〈中篇〉
「せっかく一緒に暮らしてんのに、これじゃあ今までと変わらないじゃないか…」
ブツブツ不満をぼやく親友に、ロディーは肩をポンポンと軽く叩いて宥める。
「腐るなよ。まぁ~、俺も分かんないでもないけどな……」
最後は独り言のように呟いて窓の外を見るロディー。
三人の中でムードメーカー的な役割だったコイツの横顔が、今は何だか大人に見える。
その事がなんだか変な感じだった。
「なんだよ、お前も好きな子が出来たのか…?」
さっき感じた変な気持ちがよく分からなくて、とりあえずシンはロディーの言葉から自分が感じたように解釈して聞いてみた。
「んーとぉ…、そんなとこ、…かな?///」
ヘヘッと、ほんの少し頬をピンクに染めたロディーには、いつもの巫山戯た感じは見られなかった。
「あっ!そういやぁー、リンの奴、まだ風邪直んねぇのか」
初めて見た態度に、更に困惑してしまい、隠すように別の話題を振ってみたが━━。
「あぁ、らしいぜ。…アイツは考え過ぎるからなぁ。もうちょっと気楽に考えてくれても良かっただけど…」
また一人考え込んでいる姿を見せつけられる。
「?、リンになんか言ったのか、ロディー」
リンはキラさんと一緒に暮らし始めた次の日から風邪だといって学校を休んでいる。
コーディネイターがただの風邪で何日も休むなんて可笑しいとは思っていたけど、どうやら目の前の男に原因があるようだ。
「ん~~?ナイショ♪」
唇に人差し指を当てて片目を閉じるロディーに、まだ納得がいかず、もやもやが晴れない。
「大丈夫だって!シン君にも直ぐ分かるって」
その態度が、なんだか、子供扱いされてるみたいで、いつもながら嫌だった。
ムスッとした顔をしていると「そんな顔をするんじゃないの!」と今度は頭をポンポン叩いてからまた、真剣な顔で言った。
「俺だって、お前に勇気貰ったんだからな!」
「???、俺に?勇気?」
何の事だか、さっぱりだ。
本当に最近のコイツは訳分かんねーや…。
シンは気づかない。
ロディーのその姿が自分の鏡だということに━━…。
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