夢の始まり〈中篇〉
「うぅ~~、くっそぉ…、母さんとマユの所為でキラさんと全然、話出来なかったじゃないか」
自室の枕に突っ伏して、母と妹への不満を聞く者もいない部屋で一人愚痴るシン。
あの後も結局、話には入れなかった。
唯一の救いはキラが部屋を出る前に「お休みなさい」と声をかけてくれたことぐらいだ。
「はぁ……。でも、まぁ、いっか」
どうせ、これからは毎日一緒にいられる訳だし…
今日からキラさんとは一つ屋根の下になるって事だからな♪
くぅ~!想像しただけで、すっげー楽しみかもしんねぇ!!
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「………で、それからキラさんとまともに会ってない…って?」
…コクン
「成る程なぁー。“生殺し”状態って訳か…」
そんなに、はっきり言うなよ…、さらに落ち込むだろうが……。
「まっ、タイミングが悪かったんだろう。仕事は俺達にも、どうしようも出来ねぇからな」
「まぁな…」
キラさんが俺ん家に同居して次の日に事件は起きた。
突然、大きな仕事が入ったそうで、その日の夜にキラさんから「仕事が立て込んで暫く帰れない」と電話があったそうだ。
内容は父さん達も知らないらしいけど、上司直々の要請だったとか。
……上司と言えば、キラさんが前住んでたトコに初めて行った時に会った黄褐色の髪の女の人。
(じゃあ!君がキラさんの恋人立候補者なのね)
シモンズ主任ってキラさんは言ってたけど、あの人に呼ばれたのかな?
キラさんは、その見た目とおっとりした性格を裏切って、仕事はかなり出来る人らしい。
お陰でキラさんはモルゲンレーテ内じゃ引っ張り凧。
さらに年齢や容姿も手伝ってアイドル的存在になってるみたいだ。
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