夢の始まり〈中篇〉
キラさんは俯いて考え込むと赤くなったり、哀しそうだったりと一人で百面相をしていた。
「……えっと」
俺はどうしていいか分からなかったけど、とりあえず…。
「キラさぁん!ご飯だよぉ~」
マユ……コッ、コイツゥ~~~(怒)
「あっれぇ~?お兄ちゃん居たのぉ?」
「…居たよ」
いつもより子供っぽい、甘えた妹の口調。
(どうせ、父さんに聞いて知ってたんだろうが…)
こんな態(わざ)とらしい態度をとる時のマユは大概怒っている。
しかも、その怒り方は質が悪い。
「そんな事よりぃ、キラお姉ちゃん、ご飯だよv」
俺は『そんな事』か!!?
心中で憤慨してジロリと睨めば、俺にほくそ笑むマユと目が合う。
マユは「でもぉ~」とこちらを見たままキラさんと話を続けた。
「どっかの誰かさんが繊細なお姉ちゃんを乱暴に運んだから気分悪くなって寝てたんでしょう?」
Σうっ!そっ、それは……
まさにその通りだった。
その通り過ぎて睨んでいた顔が引き攣り、たじろいでしまう。
だが、その時、救いの『天使』が舞い降りた。
「大丈夫だよ、マユちゃん。…それに実は、ちょっとお腹すいてたんだ///」
頬を染めて、キラは照れたように二人に微笑む。
キッ、キラさん…(じーん///)
あぁ~、やっぱりキラさんは優しいなぁ////
「そっかー、良かった。でも辛かったら言ってね!マユ、付きっ切りで優しぃーく看病するからね」
キラさんの笑顔に毒気を抜かれたのか、マユの顔には先程までの挑発的な態度は(あまり)感じなかった。
「うん!有難う、マユちゃん」
なんの打算も嫌みもない汚れない言葉と笑顔。
俺たち兄妹は改めて彼女のその顔に弱い事を再認識させられた。
******
それからはキラさんの歓迎会ということで、夕飯はご馳走だった。
母さんとマユは、キラさんと会話をしながら食事の世話を甲斐々しくしていた。
正直言って、すごい羨ましい…。
でも女ばかりの中に男が入っていける筈もなく。
俺と父さんは指を御えてその光景を見ているしかなかった。
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