夢の始まり〈中篇〉
月に住んでいた頃の幼馴染み、アスランとはお母さん同士が昔からの友達という事で、よく一緒に遊んだ。
━━と言うより、しっかり者のアスランがおっちょこちょいの僕から目が離せないって感じだったんだと思う。
会う人会う人に「兄妹?」て聞かれた記憶があるから
でも多分、僕はアスランに恋してたんだと思う。
アスランがどうだったのかは分からないけど…
でも、最後のお別れの時━…
『…これ』
そう言って別れ際にアスランは向き合っていた僕に両手をゆっくり差し出してきた。
《トリィ?》
その手の中には、メタリックグリーンのロボット鳥が首を傾げて僕を見上げていた。
…それは僕が課題で作りたかったけど、断念したもの。
だって、マイクロユニット得意なアスランが、自分にも簡単じゃないって言ってたし…
《トリィ!》
恐る恐る両手を差し出せば、その子はアスランから僕の手に移って、また鳴いた。
『わぁ…っ』
僕は驚いて唯々感嘆の息しか出てこない。
そんな僕に、アスランは苦笑しながら
『首傾げて鳴いて、肩に乗って……飛ぶよ?』
━━と言って笑った。
その言葉は、鳥型のマイクロユニットを作りたいと言った時に僕が出した希望事項の全て。
(アスラン、覚えてくれてたんだ…)
作りたいと言ったときには僕の不相応な希望に呆れ果てていたと思ったのに。
あの時を思い出して、それほど時間は経っていない筈なのに、懐かしさと嬉しさが胸にこみ上げる。
それと同時に、本当にアスランとお別れするのだと今更ながらに実感して鼻がつんとしてきた。
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