夢の始まり〈中篇〉
「…? あれ、ここ…」
ぼんやりと目許に手を当てて、目の奥に入ってくる夕日を遮る。
シンは、それを認めてから驚かさないように小声で話し掛けた。
「おはようございます…キラさん//// って、夕方ですけど…」
その声にピクリッと反応したキラは、ゆっくりとした動作で顔をシンに向けて言葉を返す。
「…おはよう、…シンくん…?じゃあ、ここは」
「はい、俺の家です。あの…、さっきは本当にすみませんでしたキラさん、俺…あの時は自分の事ばっかりで…」
「あの事?」とキラは首を傾げたが、直ぐに思い出したようでふるふると頭(かぶり)を振った。
「ぁ、ううん、しょうがないよ。だっていきなり、あんな事聞かされたら僕だって、びっくりするもの」
気にしないでと言った彼女の優しい言葉にシンは思わず、ありがとうございます!と頭を下げた。
そうした所で彼女には見えていないのだけれど…
シンはそんな事、全く気にならなかった。
「そうだ…ねぇ今って、何時くらい?」
「ぁ、はい、そうですね。5時半ぐらいだと」
「え…、5時半ッ!?」
それを聞いたキラは驚いてガバッ!と起き上がる。
「大変ッ!ホテルの予約しなくちゃ━━きゃあ!」
「キラさん、うわぁ!」
勢いよく起き上がったことで体勢を崩したキラはベッドから落ちそうになったが、シンが支え……たかったのだが敢え無く二人ともに倒れてしまった。
「~~~つぅッ…キラさん、大丈夫ですか?」
「ぅ…ん、シンく……ぇ/////」
自分の下敷きになっているモノを触ってキラは顔を赤くする。
自分に似ているがやはりどこか違う。
小さい頃に幼馴染みがふざけて抱きしめてきた事は何度かあったけれど、その時には感じなかった小さな違和感が今はある。
改めて彼も男の子なんだということを意識させられてしまう。
「??、キラさん…?」
抱き留めてから返事がない。
どこか怪我をさせてしまったかと心配になって、自分の胸に倒れている彼女にもう一度問い掛けた。
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