夢の始まり〈中篇〉
「……で、どう言うことだよ?」
「キラちゃんに聞いたんでしょ?その通りよ」
答えになってない。
「俺は!父さん達からそんな話、一言も聞いてなかったぞ!」
声を上げれば、しぃーと人差し指を立てて注意される。
隣の部屋でキラさんが寝ているからだ。
「………。何で黙ってたんだよ…」
「別に黙ってたわけじゃないのよ」
ね~と母さんは横にいる父さんに同意を求める。
全く悪びれてない…。
父さんは、わざとじゃないんだぞ?と決まりが悪そうにしていたから少しは許せた。
「とにかく!俺は━━」
「たっだいまぁ!お父さん、お母さん!キラお姉ちゃん、もう来てる!」
………マ~ユ~
「あれ?お兄ちゃん帰ってたんだ、お帰り」
帰ってましたよ…
「…ただいま」
「お帰りマユ、キラちゃんなら隣の部屋で寝てるわよ」
「ええ~!? お姉ちゃん寝てるのぉ、久しぶりにお話出来ると思ってたのに…」
「あら、大丈夫よ。だってこれからはv」
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(はぁ……母さんとマユが揃ったんじゃあ話はもう無理だな)
これまでの事から言ってもこの二人が自分の質問に正確な答えをくれたことは殆どない。
さらに、口ではとても勝つことは出来ないから、ここは何も言わず立ち去るのが吉。
シンは盛り上がっている母と妹、肩を竦めて「しばらく続くから行け」と促す父を置いて一人、キラの許へと向かう。
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