夢の始まり〈中篇〉





その頃のアスカ家…


「貴方、キラちゃんは、まだかしら?」

洗い物をしながら、後ろのソファーで新聞を読んでいる夫に訪ねれば、すぐに鷹揚な返事が帰ってくる。

「そろそろだろう。……所で、キラくんの事、シンにはなんて話したんだい?」

問われて、え?と思わず洗い物をする手を止めて夫を振り返る。

「あらぁ?貴方が話してくれてるんじゃないの?」

「……いや、話してないよ」

思いもよらない妻の返しに、言葉を失ったのは二人同時だった。


「………うぅ~んιシンはもう知ってしまっただろうね…」

「そうねぇ…、もしかしたらキラちゃん本人から直接聞いてるかもしれないし」

ドドドドドドッ!!!

「あらι噂をすれば……かしら?」

バタンッ!!?

「父さん!!母さん!!どういう事だよッ!!!」

噂をすれば、当人である息子がキラをお姫さま抱っこして凄い形相で現れた。

「シン、キラくん!?」

「まあ、キラちゃん!?どうしたの!大丈夫!!」

「ふぇ~~」

どこか疲れきっているようにぐったりと駆け寄ってきた二人に身体を預けるキラ。

「とりあえずキラちゃんを部屋に運びましょう」

「そうだな。シン、話はその後だ」

「わ、分かった…」

焦る二人に自分が原因だとは言い出せず、シンは黙って両親の後をついて行くことにした。


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