夢の始まり〈中篇〉




途中でロディーが散々わめいていたが、その声も徐々に聞こえなくなっていった。


「シンくんのお友達って、面白い人たちだね!」

こちらを見上げて、にこにこと嬉しそうにキラさんは二人の感想を語る。

「あぁ~ι…まぁ、そうですね。ロディーの奴は特に…」

シンは渇いた笑いをしながら声には出さず、リンに感謝の念を、ロディーには合掌を送った。


******


「おい!リン。もういいだろ!シン達見えねぇぞ!」

彼の言葉を信用していないのか、ただの確認なのか、リンは後ろを振り向き完全に二人の姿がないのを確かめてからロディーを解放する。


「……なぁ」

「何?」

「なんでお前。そんなにシン達に気ぃ使ってんだ?」

お前って、そんなキャラだっけ?

首を傾げて聞いても、彼女は背を向けたまま振り返らなかった。

「……まっ、いーけどなぁ」


「…別に」
「ん?」

少しの間の後に感情のない声で彼女は話し始める。

「…別に、ただ、…ただ単純にシンとキラさんには幸せになってほしいと思ったから…それだけよ」

そう言った時の表情は、鮮やかな漆黒の髪に遮られて窺うことは出来なかった。

彼女は独り言のようにボソリと呟くと、一人静かに帰路につく。

その後ろ姿を見ながらロディーは嬉しそうに口許を吊り上げる

「ふ~ん。…んじゃ、俺も頑張ろっかなぁー♪」

意味深な言葉を残して、ロディーはリンの後を軽い足取りで追い掛けた。


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