夢の始まり〈中篇〉
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「はあっ!はあっ!」
息も絶え絶えになりながらシンはキラとの待ち合わせ場所━━モルゲンレーテゲート前にようやく辿り着く。
「ぁ!」
そこに木陰で休んでいる一人の少女の姿を見つけて━…
「キラさんッ!!」
「ひゃあ!」
思わず叫ぶと少女は小さく悲鳴をあげた。
「…あ、シン…くん?」
いきなりの大声にびっくりしたキラは、誰の声かよく聞き取れなくて思わず疑問符で聞き返す。
「す、すみません、驚かせて…。ってか、すみません!遅れて…」
しゅんとした小さな声。
キラはシンに分からないように笑った。
彼はいつもそうだ。
発する言葉に嘘がない。
たとえ顔が見えなくても、その声色で彼がどんな様子なのかが手に取るように分かる。
シンのそういう純粋で正直な所がキラは好きだった。
だから傍にいると、とても落ち着く。
「ううん、大丈夫だよ。よかったぁ、何かあったんじゃないかって…ちょっと心配だったんだ」
「キラさん…」
見つめ合うシンとキラ。
「あー、なんつーか。
二人の世界だ…」
「コラッ、邪魔しないの」
少し離れた所から静かに二人を眺めるロディーとリン。
だが、
「ぁ…誰か、いるの…?」
「…えっ」
二人に聞こえないように話していたつもりだったが、どうやらキラには聞こえていたようだ。
「耳いいな~♪ ━で、どうする、リン?」
「…どうするって、しょうがないでしょう、もう」
邪魔するつもりはなかったが、こうなってしまってはどうしようもないとリン達はキラへと歩み寄っていく。
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