夢の始まり〈中篇〉




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キラさん…


頭の中にあるのはその言葉のみ。


キラさん!

シンは初めての単語を覚えた赤ん坊のようにそれだけを繰り返した。


キラさんキラさんキラさんキラさんキラさんキラさんキラさんキラさん(以下同文)




「キィ~ラァ~さぁ~ん!!!」


そしてそれを追い掛ける二人。


「…リン」

「……何?」

「あいつ…あんなに足速かったっけ?」

そう言い、前方を走るシンを見る。

「あれが『愛のチカラ』…ってヤツじゃない?」

自分で言って臭い台詞だと思いながらも、この言葉が今のシンにはピッタリだとリンは思っていた。

「アレが…」

いいなぁと羨む視線をシンに送るロディーに、リンは頭にはてなマークを浮かべて考える。


そして思いついた。

この状況は、もしやロディーも誰かに恋をしているのでは!?━━と


でも、そう考えると問題は相手。

彼は学校のなかでは自分達を除いて、いつも不特定な人といる。

女の子もこれといってよく一緒にいる子はいない。

だとすると学校外の人間という事になる。


「……だったらいいわ」

学校の外の人間関係は知らないから、いくら考えても予想がつかない。

なら考えるだけ時間の無駄だし、別にプチストーカーしてまで彼の事を知りたいとは思わないから。

それに━━本当はただ純粋にそう思っただけという可能性だってある。

「ん?なんか言ったか?リン」

当の本人は自分が呟いた言葉で彼女が有りとあらゆる可能性を考えているなど、露ほども思っていないようだ。

「………べつに」

ボソリと一言呟くとリンはロディーを置いて一人速度をあげて行ってしまった。


「?? …へんな奴」

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