夢の始まり〈中篇〉
「オッス!ロディー」
「早ょ~ス、……ぉ!」
教室に入ると、窓際に突っ伏している黒髪のぼさぼさ頭を見つけて、ロディーは軽い足取りで背後から近づき、腕を首に回して締め上げた。
「よっ!この幸せ者~」
「ぐえっ!」
シンからは潰れた蛙のような声がでた。
ロディーとしてはシンの幸せを祝っているつもりなのだが、祝われる方としてはこれは堪ったもんじゃない。
「…放してあげたら、苦しそうよ」
と隣にはリンの姿が━━
「うおっ!!おまっ、いつ来たんだよ!」
「ぅうー!!」
突然のリンの参入に、ロディーは腕の力を無意識に強めていく。
「今よ……今度は青くなってるわよ、シン」
「へっ?…うあっ!!
シン!しっかりしろぉ!」
死ぬなぁ!とシンの両肩を掴んで前後に揺さ振る。
カックン、カックンと人形みたいに頭を前後左右に回されては、流石のシンでも目を覚ます。
━━そして…
「お~ま~え~はぁ~、俺を殺す気かあー!!!」
ヒィイイーッ!!!
ロディーの叫びは朝の教室に虚しく響いた。
それを観察していたリンは、このパターンはもう見飽きたとばかりに溜め息を落とした。
「少しは成長しなさいよ…」
まだまだ道のりは長そうだと感じた瞬間だった。
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