夢の始まり〈前篇〉
その後は、二人で色々な事を話した。
初めて逢った時のような当たり障りない話ではない。
互いの年齢や誕生日、好きな物に嫌いな物。
俺の事は父さんが少し話していたみたいだけど…
(じゃあ、何で俺にはキラさんの事、話してくれなかったんだよ~!)
そして、びっくりしたのがキラさんの『趣味』
「ハ…ハッキング…?」
ハッキング…って、不正にアクセスする、あのハッキングか…?
「そう、……やっぱり…ヘンかな…?」
キラさんがそんな顔するから俺は思わず
「いえ!素敵な趣味です!」
━━と答えてしまった。
まあ、キラさんに悪意がないだけクラッキングよりは、随分マシかもしれないけど…
「よかった~、シンくんにそう言って貰えて。
幼馴染みには『そんな趣味はやめろ!』って怒られたんだよ」
キラさんは俺に自分の趣味が受け入れられた事に安堵していたが、心の中では俺もその幼馴染みに同意だった。
それにしても……
チラッ
父さん、遅いな…
時計を見ればA.M11:00過ぎ
父さんが行ってから、もう一時間は経っている。
「シンくん、お茶のお代わりは?」
「あ、いただきます」
まっ、いっか。
シモンズさんと仕事の話をしてるのかも知れないし…
*******
「━━ですよ」
「━━━だね」
「あぁ、聞こえたかい?
何だか、とても良い雰囲気なんだ」
彼女の部屋の中から聞こえてくるのは、二人の楽しそうな話し声。
「…分かっているよ。でも、もう少しだけだから…。マユにも、そう言っておいてくれないか。
あぁ、ありがとう…」
「シンくんは━━」
「俺は━━━ですね」
「……フッ…
…がんばれ…シン」
その話し声はインターホンを押す、その瞬間まで途切れる事はなかった。
《中篇に続く》