夢の始まり〈前篇〉




「ぃぇ……/////」



「立ち話も何だし、良かったら僕の家に来て……って言っても、何もないんだけど…ね」


「いいんですか!?」


「もちろん、大歓迎だよ」



ああ~

俺って、運が良い~





*******



キラさんが住んでるのはマンションの二階。


一階のほうがキラさんには色々と便利じゃないかとも思ったけど。

このマンション━━宿泊施設のバリアフリーは充実しているみたいだから、別に二階だからって都合が悪い訳じゃなさそうだ。




ある扉の前に行くとキラさんはパスワードを打ち込み、指紋認証をしてロックを解除していた。


それを見ながら、やっぱり従業員の宿泊場所も厳重なんだな、と何の気なしに思った。


ピピッ!

「どうぞ」

「ぉ…お邪魔してます」


通された部屋には本当に必要最低限の家具しかなくて、妹の部屋に置いてある様なアクセサリーやぬいぐるみ類は一つもなかった。


「驚いたでしょう。本当に何もなくて」


「えっ!?」

沈黙で考えている事が分かったのかキラさんは苦笑しながら聞いてきた。


「いえ!別に家具なんてなくったって!」


そう反論してみたが、キラさん自身は、その事に対して気にしている様子はなかった。

慣れているのだろうか。



「座ってて。え~っと、飲み物は? 紅茶とコーヒーと…お茶しかないけど」


「あ、俺手伝います!」

「いいよ、シンくんはお客様なんだし」

「大丈夫です。俺が手伝いたいだけですから」



「じゃあ、…お願いします」



あ……この台詞って…


チラッと彼女を見ると、彼女はニコリと笑って…まるで俺が覚えているか試しているみたいだった。


……よぉーしッ!


覚えているのは彼女だけじゃないって、俺もちゃんと証明しなければ!


「…はい。…喜んで、お願いされました!」




………。





「ふふっ///」

「へへっ///」

二人は顔を見合わせて笑った。


なんか、こうやってると新婚みたいだな…



いいなぁ…新婚////







━━父さん…





━━頼むから早く帰って来るなーっ!!



29/30ページ
スキ