夢の始まり〈前篇〉
キラさんから聞いた話で何かを思い出したのか、その人は「あぁ!」と両手を合わせた。
「じゃあ!君がキラさんの恋人立候補者なのね」
「こっ!恋人ぉー!?」
「シモンズ主任!////」
「照れなくても良いのに」とその人は俺たちの慌てる反応を見て、しばし楽しんでいた。
「ウフフッ。はいはい、お邪魔虫は直ぐに消えるわ。後は二人でごゆっくりね。
キラさん、今日は本当に、ありがとう。アスカさんに会ったらキラさんは帰ったって、ちゃんと伝えておくわ」
「あっ、お願いします!」
「はい、じゃあねー」
「はい、お疲れ様でした」
「「………」」
シモンズさんが帰った後も気まずい雰囲気は続いた。
何か話したほうが良いとは思ったけど、生憎と気の利いた言葉の一つも浮かばない。
そんな時に声をかけてくれたのは、やっぱりキラさんで━━
「ぁ……ごめんね。折角迎えに来てくれたのに、余計な手間掛けさせちゃったみたいで…」
キラさんは心底申し訳なさそうに俺に謝ってくれた。
「いえっ!そんな事ないです。別にキラさんが悪い訳じゃないんだし!」
そうだ、キラさんだって好きで仕事をした訳じゃない。
たまたま凄く急ぎの仕事が入って、それはキラさんにしか出来ないから、しょうがなくて…
「~~とにかく、キラさんは悪くないです!」
子供みたいな考えでしか慰めの言葉が出てこなかったけど。
でも、キラさんは笑って言ってくれた。
「…ありがとう」と━━
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