夢の始まり〈前篇〉
「シン、少しここで待っていてくれ。父さん、ちょっと本社に行って来るから」
あのお兄さんから詳しい話を聞いた父さんは、モルゲンレーテにキラさんを迎えに行くことにした。
俺も一緒行きたかったけど、モルゲンレーテに入るまでには幾つもの検問があって、例え関係者が一緒にいても、家族や知り合いは建物に入ることすら出来ないらしい。
だから俺は、一人で大人しく二人が帰って来るのを待つことにした。
「あぁ、…分かった。
退屈だから早く帰って来てくれよ」
「分かってるよ」
車が遠ざかって見えなくなると、ずっと張り詰めていた緊張の糸が切れて、後ろの壁に凭れ掛かった。
(俺って……運悪りぃーなぁ )
そんな事を考えていると、さっきの同業者のお兄さんが俺の事を興味深げにチラチラと見ていた。
気になった俺は「何ですか?」と訊ねると…
「あっ!もしかしなくてもアスカさんトコの息子のシンくん?」
「え、あっ、はい…そうですけど」
…ってか、なんでこの人、俺のこと知ってんだ?
俺の考えている事が分かったのか、お兄さんは苦笑しながらも話してくれた。
「ああ、アスカさん━━お父さん達から話は聞いてたよ。
もちろん、ヤマトちゃんの事もなvV」
…………へっ?
お兄さんは突然、俺の後ろに回り、強引に肩を組んできて、耳元でボソッと囁いてきた。
カ・ン・バ・レ・よ!
━━と
「なぁっ!?///」
お兄さんはそれだけを言うと、すぐに俺を解放して、高笑いしながら、さっさとマンションの中に消えていってしまった。
(……。……!?…くっそぉ~!///
父さん達、なに余計なことまで話してんだよ!!)
まさかっ!他の人もこの事知ってんのか?
はっ!
もっ、もしかして…
キラさんも知ってるんじゃ~
あぁ~~ もぉ~~
父さんのバカァ~!!
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