夢の始まり〈前篇〉






「ただいまー。…ん?」


いつもより少し遅くに帰宅すると、玄関にはこの時間帯にはあまり見掛けない靴が二足とも揃って並んでいた。


(父さん達、もう帰って来てるのか?今日は仕事早く終わったんだな…)


そんな事を思っていると、リビングから「あ!帰って来た」と声が聞こえたかと思ったら、マユが玄関にいる俺のところまでに走ってきた。




「お兄ちゃん、遅いよ!
せっかく良い知らせがあるのに、何してたの!!」


「友達と話し込んでたんだよ。それで?何だよ、良い知らせって」


「あっ、そうだよ!お兄ちゃん、聞いて!聞いて!
今度の休みに、キラさんがウチに来てくれることになったの!」



「…………嘘だろ?」



本当だって!と信じてくれない兄に頬を膨らませて睨み付ける。


その態度に、マユの言っている事が嘘ではないと確信したシンは、リビングにいるだろう両親のもとへと急いだ。






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