夢の始まり〈前篇〉
「はぁ…」
また溜め息が出た。
今日だけで半年分、いや1年分の溜め息をついたかもしれない。
そんなことを思いながらシンはベッドに横になっていた。
だが、今の溜め息は外食の時の溜め息とは違う。
唐突な話の展開に対する溜め息だ。
あの後、善は急げとばかりに父さんと母さんは明日にでもキラさんを食事に誘うらしい。
いくらなんでも早すぎだろうι
昨日今日会った人間に食事に誘われたら引くぞ。
俺だったら絶対に断るな。
それにキラさんは女の子でおまけに目が見えない上に足も動かないんだぞ。
いくら同じ職場の先輩でも、警戒するって。
ったく、父さんたちは、もうちょっとデリカシーってものを考えて欲しいよなぁ。
この言葉をマユが聞いたら、きっと
「お兄ちゃんの口からデリカシーなんて難しい言葉が出るなんて思わなかった~」って言われるんだろうけど
いや!
……もっと酷かったりして…
でも…
キラさんにまた会いたいという気持ちも、もちろんある訳で…
そんな複雑な気持ちを持ったまま俺は眠りに就いた。
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