夢の始まり〈前篇〉
「もう、お兄ちゃんったら」
そう言いながら、マユはポーチからハンカチを出して俺に渡してくれた。
「サンキュー…」
「どういたしまして。
で!どうなの、お父さん?」
同じ人?違う人?とマユは“キラさん”に興味津々で、父さんに詰め寄っていく。
「あぁ、どうやら二人の“キラさん”は同一人物のようだな」
ああ、やっぱり…
心の何処かで、そうなんじゃないかと思っていた。
キラさんの説明をしている時の父さんの表情を見て、そうかもしれないと予想はしていた。
「ねえ、マユもキラさんに会いたい!」
お兄ちゃんやお父さん達だけなんて狡いよぉ~と口を尖らせて、妹は俺たちを見る。
「ん~、そうだな。思いきって今度夕食に招待してみるか」
「…は?」
「良いわね。ヤマトさん、モルゲンレーテの宿泊施設で生活するって言ってたから、1日くらい大丈夫よね!」
「…え?」
「やったぁー!キラさんに会えるんだぁー!!」
「………マジで…?」
……………
「……あれ?お兄ちゃん、嬉しくないの…?」
皆が盛り上がっているなか、兄だけが鳩が豆鉄砲食らった間抜け顔をしていた。
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