夢の始まり〈前篇〉
「じゃあ、シンが言っているキラさんは、どんな人なんだ?」
「えっ?」
いままで静かに妻と子ども達の論争を見守っていた父が、いきなり止めるように質問してきた。
シンも話さない訳にはいかなくなり、ぽつりぽつりと話し始めた。
「え、えっと////肩ぐらいまでの亜麻色の髪で……色が白くて、華奢で…」
彼女の事を思い出しながら、その度に頬が熱くなるけれども一つ一つゆっくりと答えていく。
最初は恥ずかしそうに、もじもじとしていたが、それでも声には気力があり、嬉しいという雰囲気がありありと伝わってきていた。
「……車椅子に…乗ってて」
だが、話の終わりに入ると、シンの声色は消え入りそうなほど哀しい響きが混じっていた。
「目が………っ、目が見えないって…」
「………そうか」
父親の返してくれた一言は、とても暖かく…その瞳は慈愛に満ちていた。
「……うん」
俺は自分でも気がつかないうちに涙を流していた。
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