夢の始まり〈前篇〉
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「……はぁ」
「どうした、シン。具合でも悪いのか?」
「ん?…いや、別に…何でもない」
そう言うと目の前の食事をフォークでつつきながら、溜め息をつく……さっきから、この繰り返しだった。
「…ねぇ、マユ。シン…何かあったの?」
「マユ、知らないよぉ。
家に帰って来たときから
お兄ちゃん、こうなんだもん」
部屋で今日来ていく服を選んでいたら、ふらりと帰って来た。
参考までに服二着を持っていき似合うほうを聞いてみたが、あぁ…とか、うん…等、ろくな返事が返ってこないので…
その時は「もう良い!!」
と部屋に戻っていった。
両親達が仕事から戻って、久しぶりの外食に出掛けてもシンは相変わらず上の空で、さっきから何回も溜め息ばかりついていた。
( !、…もしかして~お兄ちゃん、女の子に振られたのかもよ~♪)
(あら~///、シンったら告白したの?結構やるじゃない)
キャッキャッと母娘で盛り上がっている時もシンは一人、また溜め息をついて落ち込んでいた。
「そういえば、きょう仕事場に女の子が入ってきていたね、母さん」
「あ!そうそう。可愛い女の子が来たのよ。名前は確か……」
「…キラさん(ボソッ)」
「そうよ、キラさん!キラ・ヤマトさんって言ってたわ」
「…………へっ?」
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