夢の始まり〈前篇〉





ヘリオポリス崩壊から
数ヵ月━━


相変わらず俺たちの生活に変わりはなかった。

あの時はスクールでもかなり話題になったけど、
今じゃ、そんな事もあったよなぁ…程度だ。



「じゃーな!シン」


「おぅ、また明日な」



今日は久しぶりに家族揃っての外食だ。

でも、父さんも母さんも仕事で少し遅くなるかもしれないって、言ってたから。
俺は、家に帰っても特にする事もなく、何処かで暇を潰そうと考えて、前の休みにマユと二人で見つけた秘密の場所に行くことにした。






途中で自転車を置いて暫く歩くと、微かに塩の香りがしてきた。

それと同時にザザーという波の音も少しずつ鮮明に聞こえてくる。








「………あっ」

あと少しで目的地という近くの小高い丘に、ポツンと誰かがいるのが見えた。





5/30ページ
スキ