夢の始まり〈前篇〉
ヘリオポリス崩壊から
数ヵ月━━
相変わらず俺たちの生活に変わりはなかった。
あの時はスクールでもかなり話題になったけど、
今じゃ、そんな事もあったよなぁ…程度だ。
「じゃーな!シン」
「おぅ、また明日な」
今日は久しぶりに家族揃っての外食だ。
でも、父さんも母さんも仕事で少し遅くなるかもしれないって、言ってたから。
俺は、家に帰っても特にする事もなく、何処かで暇を潰そうと考えて、前の休みにマユと二人で見つけた秘密の場所に行くことにした。
途中で自転車を置いて暫く歩くと、微かに塩の香りがしてきた。
それと同時にザザーという波の音も少しずつ鮮明に聞こえてくる。
「………あっ」
あと少しで目的地という近くの小高い丘に、ポツンと誰かがいるのが見えた。
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