夢のカケラ
「次はマユだよ!」
マユは真っ赤なリボンと白い花の飾りがついた小さな箱をキラの前に置いた。
「改めて、お姉ちゃん
お誕生日おめでとう!」
「ありがとう、マユちゃん」
綺麗にラッピングされたリボンをマユは自らほどいて、箱の中から小さな小瓶を取り出した。
小瓶には淡い色の液体らしきものが入っている。
マユは蓋をとって小瓶を無言でキラの鼻先へと近づけた。
「あっ……香水…?」
「コロンだよ~♪」
その匂いはキラさんの隣にいた俺にも分かった。
柑橘類のような爽やかな香りだ。気分の落ち着くこの匂いは、俺も嫌いじゃない匂いだった。
「持続時間が短いし、柑橘系の香りだから職場でも怒られないと思うよ」
「ありがとうマユちゃん。とっても良い香り」
最近、ちょっと忙しかったから…と苦笑するキラさんの顔には、本当にどことなく疲労の色が見えた。
「そう言えば……2日間ぐらいキラさんも父さん達も仕事泊まり込みだったよな」
あの時はマユと家の中に二人っきりで、凄く淋しくて心細く感じたのを覚えてる。
.