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それは嵐の日だった。強い雨音はこちらに攻め寄せる敵の足音を消し去り、強い雨足はその姿を隠した。そのため行動が遅れた。その一手の遅れが致命的だった。敵方は知っていたのだろうか、岩の魔神が不在だということを。
なまえは帰終に逃げろと叫んだ。生き残った領民達の避難はあらかた完了している。この領地の仙獣達は正しく領主の意志を理解して、素早く行動してくれたおかげだ。だから、雨に濡れることも構わずなまえは帰終の背中を押した。
「なまえは!? なまえは……どうするの?」
「私は残る」
「それなら、私も……っ!」
残るといって危険な役割である殿を務めようとするなまえに帰終は自分だけが逃げることはできないとそう言ってなまえと共にいようとした。
「帰終ちゃんは領主なんだから皆を導かないと……」
「なまえをおいてはいけない」
なまえにとって帰終が特別な存在なように帰終にとってなまえの存在もまた同じである。お互いにとってこの世界の誰よりも長く付き合ってきた大切な友だったから。でも、なまえは帰終の言葉を首を振ることによって否定する。強い雨が二人の体を濡らしていく。
「……あの人がいないから、あなたが……帰終が皆を導いて、助けてあげなきゃ」
なまえはずるい。こんな時に呼び捨てにするなんて。そう帰終は思った。
「大丈夫。私は大丈夫。私の“目”は正しく機能しているし、それに帰終ちゃんと皆も大丈夫! 帰終ちゃんは領主なんだから! 皆、帰終が先頭に立ってくれたら安心する」
「なまえ……でも、私は……」
なまえのことが心配だと言う前になまえに、だから行って! と半ば無理矢理背中を押される。未練の残るなか帰終はなまえと別れた。これが最後だと知っていたのなら、もっと違う言葉をかけられたのに。なまえは魔神の率いる兵たちを足止めするために一人残った。雨足がさらに強くなり、視界を遮る。
帰終は無事に逃げられただろうか。敵が来たのが北で良かった。一番安全な南方向とは反対側だから。そもそも南に岩の魔神がいるのだから敵がそちらからではないことは簡単に理解できる。そして、西には帰終機とあの魔神の領地を通ることになる。
東は地形上、敵にとって難しい立地だ。それに彼らはあの岩の魔神を相手にするほどの力はないと言う事だろう。それは分断するほどの戦力もないという事だろうか。とにかく、敵方は勝てると思い込んでいるはずだ。だから、彼の不在を狙ったのだろう。
でも、ここにはなまえがいる。誰もこの先には通さないと決めた。なまえの“目”は帰終に話した通り、正しく機能している。だから魔神以下の者などなまえの敵ではない。それは雨が嵐に変わろうとも関係ない。
雨の中、何の武器も持たずに一人そこに立つなまえの姿は敵方に奇妙に映っただろう。見た目にはか弱そうな女。雨に濡れることも厭わず、ただ立っているその姿は誰が見ても怪しい。囮なのか、しかし人気は感じられない。
攻めようにも何かあるような気がして先遣隊は攻めることができなかった。攻めあぐねる兵に隊長は先遣隊の務めは敵の罠を見破ることだと声を上げて、彼らの士気を高めた。
彼らがその女の前に姿を現した時、突然空が晴れた。その女の周りの雨が止んだ。そして、彼らは理解した。
――魔神だ。
この非力にみえる、か弱そうな女は人でも仙獣でもない。圧倒的な力で大地を、人を、この地を蹂躙することのできる最上位の存在であると。女の目が轟々と光る中、それなりに熟練した技術を持っていると自負していた兵は体に衝撃を受けて意識を失った。
「――くそっ」
帰離原と名づけられたその場所の全貌が見えるところにいた魔神は予期したものとは違う展開をみせる戦場にギリっと爪を噛んだ。塵の魔神はそれほど強くないと聞いていた。そして、領民に情けを見せる魔神だと。だから、弱く力のない領民の一人でも捕まえれば領地を落とすのは簡単だと思っていた。障害であるあの岩の魔神さえいなければ容易であると。
しかし、現実はどうだ。領民を捕まえられていないどころか数を減らしているのはこちらではないか。相手はたった一人の大して武装もしていない奴に確実に兵数を減らされていた。視線の先には自らの兵を手慣れた様子で再起不能にしていくひとつの影。ほとんどその場から動かず相手の武器を巧み奪い操る姿は聞いていた塵の魔神の想像とは違う。
あれでは武神と呼んでも間違いはない。その時、魔神は思い出した。塵の魔神の傍にいると言われていた一人の魔神のことを。領地を持たないあの魔神は奇異な魔神であると認識していた。そうだ、かつて塵の魔神が岩の魔神と手を組む前に塵の魔神の領地が侵攻されなかった最も大きな要因が塵の魔神のそばにもう一人魔神がいたからだった。
あとがき
某冒険映画の父親がいつも息子のことをあだ名で呼ぶ(しかも息子はそのあだ名が嫌い)のに、いざという時は名前でちゃんと呼ぶ場面がとても好きです。とても有名な映画なので多分わかる人にはわかると思います。
中途半端ですが、これ以上書いても面白くなさそうなので終わりです。気が向いたら書くかもしれません
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