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針に糸を通して、その針で布を刺す。その繰り返しで一枚の布はその形を新しい形へと変化させていく。地道な作業であるが、その先にある未来を描くとその地道さもとても楽しい道となる。その中にどんな感情があったとしてもそれは変わらない。この服を着るあの人がこれから先ずっと穏やかに過ごせるようにと願いを込めて、私の持ちうる全ての幸福をあげたい。きっと彼はそれを望まないから言わない。でもそんな気持ちを込めて一針一針丁寧に縫い上げていた。その作業も終わりを迎えようとした頃、その彼が私を見つけて声をかけてきた。
「――なまえ」
「旦那様……? ちょうど良いところに」
そのタイミングの良さに驚きながらも私は旦那様に返事をした。顔をあげて彼を見ると旦那様は私のもとへと歩み寄ってきてくださった。
「どうした? 何かあったのか?」
「あの、少しお時間があれば試着をしてほしいのですが、……かまいませんか?」
「ああ、かまわない」
近づいてきた旦那様に私はもうまもなく終わりそうなそれを手にお願いした。私のお願いに二つ返事で頷いて時間をとってくれた旦那様は隣に立ったまま私の手元を覗き込んだ。
「しかし、あの布の山からここまで仕上げるのは大変だっただろう」
そのように話されて私も初めはできるかどうか心配だったことを思い出す。けれどこうして無事に形として目の前にあらわれて自分を褒めてあげたい気持ちになった。でも、きっとこの人のためのものだったから私はこんなにも気合が入っていたのだと思う。旦那様のためだから布を用意して、一針一針丹念に針を入れて地道に進めていけたのだ。最後の一刺しを終えて私は糸を切る。
「いいえ、苦労などございません。旦那様のことを考えていたらとても楽しかったです」
そこまで言って私はもしかしたら不謹慎なことを言っているのではと気がついて、言葉を訂正した。
「……いえ、すみません。不謹慎でしたね。旦那様は色々抱えてらっしゃるのに楽しいなどとは……、申し訳ございません」
そう、これから先に行われることは旦那様にとって……いや、旦那様がずっと目をかけてきた璃月にとって大きな転換点となる。それがどう転ぶかは旦那様の見守っていた仙人達や民達の動向次第である。彼らが想像通りに成長しているのならば彼ら……特に凡人達にとって望む時代となる。それはある種の別れと同じだ。旦那様にとっては長年の重荷との別れとなるがきっとそこには寂しさもあるだろう。負の感情だけで国を導くことなどできやしない。
「……気にするな。その気持ちはお前だけのものだ。大切にするといい」
旦那様の優しい言葉は私の心に波紋のようにひろがり暖かい感情をもたらしてくれる。私は旦那様と同じ気持ちになることはできない。旦那様は旦那様であり、私は私なのだから。旦那様の重荷を軽くすることはできてもその全てを肩代わりすることはできないのと同じだ。だからもし、旦那様の目論見がうまくいき、神から人の時代へと移り変わったその時は心穏やかに過ごせるようにお傍にいたい。旦那様と一緒に今までできなかったこと様々なことを経験して多くのことを分かち合いたい。そんな日々に私の作ったこの服を旦那様が着て隣で歩いてくださることは私にとってどれほど幸せだろうか。ううん、本当は私の服などお召しにならなくても良い。旦那様が笑って過ごして下さるのならそれだけで幸せなのだから。
設定
なまえ
旦那の服を縫いたい嫁。神として生きてきた夫に対してこれからは他人のためだけではなく、自分自身のためにも生きてほしいと思っている。そして今まで経験したことのないことをたくさん経験してほしいと思っている。
鍾離
そろそろ客卿になるかもしれない岩神。なまえが服を作りたいと提案してきたので快く受け入れた。実はそろそろ出来上がるのではないかと思って彼女のもとに訪れた。
あとがき
鍾離の服は手触り良さそうですね本当は試着する話だったのですが試着する前に力尽きてしまいました。2023年海灯祭でとある事実がわかったのでネタ行きになりました。
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