事前計画は単純でかまわない
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「少し旅をしないか」
私が旦那様にそう提案されたのは海灯祭が終わった後のことである。空くん達によって封印から目覚めることのできた私。目覚めたのはいいのだけれど眠っていた間にも時は進んでいくわけでこの璃月にも想像以上の変化があった。そのひとつは目の前でお茶を片手に私に話しかける彼である。彼は私に今は鍾離と名乗っていると教えてくれた。しかしある日、お茶を6時間かけていれたと聞いた時はさすがに耳を疑った。それと同時に今がいかに平和な世であるのかまざまざと実感させられた。……本当に魔神戦争は終わってしまったのだと。
「旅?」
「ああ。郊外旅行だ」
郊外旅行。聴き慣れないその単語に首を傾げると彼は郊外旅行について丁寧に説明してくれた。どうやら璃月港以外の帰離原や荻花州等へ旅行に行くことを言うらしい。空くん達に起こしてもらって、外で待つ旦那様と再会した時には郊外にいた私。だけどあの時は様々なことがいっぱいいっぱいで外の様子など全く気にしてなかった。
「起きてから璃月港以外ちゃんと見てないだろう」
彼はまっすぐと私を見ながら言葉を紡ぐ。その瞳の色は私の知る彼のもので彼と目が合うとひどく安心する。でも変わった璃月にまだ慣れていない私は外に行くことも躊躇してしまう。
「……俺はもう神ではない」
そう前置きをして旦那様は私に話をはじめた。前に聞いた私の知らないうちにテイワット大陸の七神の1柱として封じられた彼。あの小さかった璃月を大きく発展させて契約の神としてこの国を統治していたらしい。知らない間に七神だった彼は私の知らない間に神の座を降りていた。その過程についてはあまり詳しく聞いていない。私はそれでいいと思っている。
「だからこの璃月はもう神のものではなく、人のものになった。凡人達の手によってこれからきっと変わっていくだろう」
「……」
旦那様は淡々と述べる。たしかに、神の考えと凡人の考えは違うだろう。生きている年数も違えばその価値観も異なる。神には愚策に見えても凡人達はそれが良策だと思うかもしれない。目先の利益か先の繁栄かそういう選択ひとつでも未来は変わる。その価値のズレが考えてもみない変化を起こす。だから変化は必ず起こる。
「その変化がどちらに転ぶにせよそれはもう俺の関わることではない」
旦那様のいう通りだと思う。それが良いのか悪いのかは後世の人間が決めればいい。感謝も恨みもそれを選んだ人間相手にすればいい。
――この土地から神は去った。
それが今の事実である。そもそも私が彼のその決断に口を出す権利はない。
「だからお前に見てほしいんだ。俺の作ったこの国が完全に変わる前に……お前だけにはしっかりと俺の作ったこの璃月という国を見てほしい」
私は彼が七神と呼ばれた頃のことを一切知らない。たしかに何度か彼と共に歩いた璃月港内で岩王帝君についての話は耳にした。けれどそれは伝聞であって実際に見たものではない。私が知る彼は岩の魔神であった頃とこうして凡人と自称する今の目の前の彼だけだ。今まで……いや今なお璃月の人々が敬愛する岩王帝君としての彼の顔を私は知らない。そして、それを知ることはこれからもないだろう。
「先日、胡堂主には話をしたんだ。今度長期休暇をもらう算段は整えた」
「長期休暇……あなたがいなくてもよろしいのですか?」
「長期と言っても璃月を周るぐらいの日数だ。無期限というわけではないから問題ない」
郊外旅行……。いったい何日かかるのか私には見当もつかない。そもそもこの璃月がどのくらいの広さなのかよくわかっていない。前に旦那様に今までの一般的な歴史を教えてもらった。けれど情報量が多すぎて私が興味のあった部分しか覚えていない。そのせいかあまり理解できてないような気がする。そんなふうに考えている間に立ち上がった旦那様がいつのまにか卓上に地図を広げていた。
「さて、問題はどこから見てまわるかだな」
「璃月港は……」
「ここだ」
先程とは違い私の隣に座りなおした旦那様が指した先に書かれているのは璃月港の文字。璃月港は端っこに位置しているからルートさえ決めてしまえば周りやすいかもしれないと思った。どこから行こうかと地図を見ながら考えていると不意に懐かしい友人のことを思い出した。彼女にはまだ会っていないけど生きていると旦那様は言っていた。帰終ちゃんにはもう会えないけれど、彼女にはまだ会えるのだ。せっかくなら会いたい。会って話をしたいと思う。どこにいるのか旦那様なら知っているはずだ。でも、凡人になったという彼のことだから私のこの願いは叶えられないかもしれない。それでも提案する意味はあるだろう。居場所だけでも教えて貰えれば後で会いに行けるはずだから。
「あの旦那様!」
「ん? どうした」
落ち着いた様子でお茶を飲んでる旦那様を見ると彼も湯呑みを置いて私を見てくれた。彼の目を見つめたとき私はこのことを言ってもいいか迷った。大切な彼を困らせるかもしれない。それでも私は言わずにはいられなかった。彼女に会いたい気持ちはもう止められない。
「私……留雲ちゃんに会いたいです!」
私の要望を聞いて旦那様が少し考え込んだのは言うまでもない。
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なまえ
長い間眠っていたから璃月どころか世間に疎い。基本的に常識はあるはずだが世俗に疎いためにどこか浮世離れしている。もちろん、人間ではない。だから価値観のズレがあるのかもしれない。
鍾離
自称凡人で記憶力抜群の旦那様。神の座を降りた後なので璃月の統治は人間の手に渡っている。(名前)の記憶は戦火にのまれた璃月で止まっているので、自分が統治した後の平和な璃月を見てほしいと思っている。