噂のキャベツ探索大作戦!!
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暇だから香菱の食材探しツアーについてきたなまえは香菱に次のお目当てを尋ねた。
そして、返ってきたその答えに思わず声を上げた。
「はあ? キャベツう~?」
「そう! キャベツ!!」
なまえの隣で昼寝をしていたグゥオパァーがその声で起きてしまった。
起こしてしまったなまえは慌ててグゥオパァーに謝った。
グゥオパァーに謝りながら謝罪の意味を込めて、よしよしとグゥオパァーのお腹をなでなでする。
突然起こされて少しご機嫌斜めの様子だったグゥオパァーもなまえのその行動に満足そうにまた微睡みはじめた。
それはそうとして、なまえは香菱の言葉に眉をひそめる。
それに対して香菱の目は新たな食材への想いでキラキラと輝いている。
「……キャベツなんてそこらへんにあるじゃん」
「ちがうよ! ただのキャベツじゃないの。この間旅人に会ったでしょ?」
そう言われて、なまえはこの間、空とパイモンという名の旅人に出会ったことを思い出した。
「その時に宝箱の話になったんだけど、いろいろあって変わったヒルチャールっていうのがキャベツを落としていくらしいの!」
「え? 何でキャベツの話になったの……? 何があったのその間に……」
あの時、なまえはパイモンとグゥオパァーと遊んでいた。
その時に香菱は空から食材情報を得ていたらしい。
一体どんな話題転換で宝箱から変わったヒルチャールとキャベツの話になるのかがわからなかった。
「ん~、なんて言ったらいいんだろう。キャベツの呪いの話になって、それが変わったヒルチャールが呪いをかけてるんじゃないかって……」
「??」
なまえと香菱は仲の良い友達だ。
グゥオパァーのお腹を撫でながらなまえは香菱の話を聞いていたがまったく理解できなかった。
考えに夢中になっていつの間にかなまえは撫でる手が止まり、グゥオパァーから離れた。
それに気づいて目を開けたグゥオパァー。
なまえはそんなグゥオパァーと目があって「わかる?」と尋ねたけれどグゥオパァーも首を傾げている。
その後、グゥオパァーはそれよりももっと撫でてと言わんばかりになまえの手を引っ張って自分のお腹の上に導いていた。
なまえは考えることを諦めてグゥオパァーの望み通りにまた撫でることにした。
「……うん。ごめん全くわからないから、その変わったヒルチャールの話に戻していいよ」
「そう? じゃあ、話を戻すね。それで、そのヒルチャールがいるかもしれない場所を何箇所か教えてもらったんだけど……」
なまえはグゥオパァーを撫でながら香菱の話に耳を傾けた。
香菱は旅人から得たその変わったヒルチャールの情報をなまえにも教えてくれた。
「――じゃあ、この近くにいるかもしれないってこと?」
「そうなの。あの円形広場の右手の崖になったところの上にいるかもしれないって聞いたよ!」
香菱の言葉になまえは一度腰につけた懐中時計で時間を確認した。
「奔狼領は狼が出るっていうし、昼のうちに抜けてしまわないと!」
「そうだね! グゥオパァー行くよ~! 起きて!」
「!」
清泉町で町民から得た情報を思い出しながらなまえが荷物を片付けはじめると香菱はグゥオパァーを起こす。
突然、名前を呼ばれてパッチリと目を開いたグゥオパァーは驚いたように辺りをキョロキョロと見回していた。
「グゥオパァー、起こしてごめんね。もう移動しなきゃいけないから起きて!」
そうやってグゥオパァーが起き上がるのを待ってからなまえと香菱は変わったヒルチャールを探すために歩き出した。
――
「うわあ! またキャベツ飛んできたし!」
飛んでくるキャベツを避けながらなまえは叫んでいた。
運良く円形広場の右側の崖にその変わったヒルチャールはいた。
あたりをキョロキョロと眺めていたそのヒルチャールはたしかに変わっていた。
普段なら人を見つければ問答無用で襲いかかってくるはずのヒルチャールが何もしてこなかった。
そのかわり話しかけても無視された。
キャベツ欲しさに痺れを切らした香菱がグゥオパァーを突撃させるとさすがに怒り出す。
当然戦闘が始まった。
相手の手の内がわからない以上はじめは距離をあけて様子をみる。
するとその変わったヒルチャールはどこからか旅行鞄のようなものを取り出して、そのなかを探ると中にあったキャベツを投げてきた。
当たったら痛いのでもちろん避ける。
そして、近づけば容赦なくその旅行鞄を武器にして殴りかかってくる。
「ひええ! こんなの無理ぃい!」
「なまえ! ちゃんと見てれば大丈夫だから! がんばろう!」
変わったヒルチャールが投げてくるものを避けながら香菱は半泣きになるなまえを励ましていた。
キャベツ、謎の黄色のぬいぐるみ、よくわからないキラキラ光るものやらなんやら……そのうち猪でも飛んできそうだと思いながらなまえはひえーと情けない声を上げた。
それでも逃げずに変わったヒルチャールと対峙している。
鞄で殴りかかられるよりも距離をとって投げられるものを避ける方が簡単だ。
だからなまえと香菱は基本的に距離をとり、隙を見て近づいて攻撃をする作戦をとった。
けれどタイミングを間違えて近づけば鞄が飛んでくるし、時々投げられる黄色いぬいぐるみなんて爆発する。
こわいよーとなまえの叫ぶ声が静かな奔狼領にこだまする。
そんな彼女を励ましながら香菱は変わったヒルチャールから投げられたキャベツを避ける。
べちゃっ、というキャベツがつぶれる音を聞いてもったいないという思いを持ちながらチャンスをうかがっていく。
「なまえ! もうすぐ倒せるはずだから!」
「うう……、もう嫌だ……。あきらかにカバンの容量あってないし!! 物を投げつけてくるなー!」
香菱の言葉に励まされたなまえはそう言って変わったヒルチャールに向かって走り出す。
そして渾身の力を振り絞る。
謎のカバンを漁る変わったヒルチャールに近づき、攻撃を仕掛けた。
嫌だ嫌だと弱音を吐きながらもなまえはちゃんと変わったヒルチャールにダメージを与えていた。
そして、この一撃をもって変わったヒルチャールは謎のカバンの中に入って姿を消した。
「うう、ようやく……終わったー……」
「お疲れさま!」
脱力してへたり込んだなまえに香菱は声をかけた。
去った変わったヒルチャールの代わりに残ったのは噂のキャベツ達。
なまえの近くにやってきた香菱とグゥオパァー。
2人と1匹でそのキャベツを興味津々に見つめる。
「見た感じは普通のキャベツ?」
「投げてたキャベツと一緒なのかな……」
香菱が唸りながらキャベツを持ち上げてじっくり見回している。
その横でなまえは変わったヒルチャールに散々投げつけられたキャベツやらなんやらのことを思い出しながら他のキャベツを拾う。
そんな2人の間でグゥオパァーは食べたそうにキャベツを見つめていた。
――
それから悩んでいても仕方ない。
そう結論づけた2人は夜になる前に奔狼領を抜け出した。
日が暮れる前に安全を確認して誰かが以前使ったであろう野営地を借りることにした。
ようやく香菱が料理人として腕を振るう時間がやってきた。
香菱は旅人にこの噂のキャベツの情報を得てからキャベツを使った料理を考えていた。
なまえとグゥオパァーにも手伝ってもらいながら、香菱は思い描いたその料理を形にすることができた。
そのころにはすっかり日も落ちていた。
「普通のキャベツと変わらない気がするんだけど……」
「本当だね~。でも、食べてみなくちゃわからなかったんだから良い経験だよ」
もぐもぐと香菱の作ったいくつかのキャベツ料理と生のキャベツを食べたなまえは素直にその感想を口にした。
香菱もなまえの言葉に同意する。
変わったヒルチャールを退けて代わりに得たキャベツは特に変わった物ではなかった。
普通のキャベツだ。
香菱が与えたキャベツを両手で掴み、食べるグゥオパァーもいつもと反応は変わらない。
「うーん、わざわざ落としていくキャベツだから特別なものだと思ったんだけどな~」
香菱のそんな呟きが夜のモンド郊外に響いた。
設定とあとがき