彼女のことは何も知らない
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―――
「――こんなこともできないなんて、いったい今までどうやって生きてきたんだか」
一番簡単な任務をこなすこともできずに帰ってきた部下を躊躇いなく蹴り上げた。こんな役立たずの部下を持ってしまうなんてついてない。腹が立って足が出てしまったがその労力すら勿体無いと思った。でも、この憤りを解消するためには多少の無駄遣いも仕方のないことだ。グズで間抜けな使えない部下を持つと上司は大変なのだ。
「僕の決めたことも守れないなんて、本当に使えないな。お前にもわかるように簡単なことを命じてやったのに、それすらもできないなんて、よく僕の前に出てこられたね」
怯えた顔だけは一丁前にできるくせに、任務ひとつまともにこなせないなんて恥ずかしくないのだろうか。殴る手がもったいないが表情が顔に出るやつは見ていておもしろい。それは僕には持っていないものであり、コロコロと変わる表情はあの人間を思い出すから。もっともあの人間に危害を加えたことなど一度もない。驚いた顔を見せたと思えば笑っていてと喜怒哀楽が激しくて弱そうに見えるのに、僕が何をしようとものらりくらりとかわしていた。あの人間の強さはきっと今まで見た中でも一、二を争うような強さに思える。それは僕が戦いというものを初めてしっかりと見たのはあの人間の姿だったからというのもあるのかもしれない。思い出補正ともいえるかもしれない。けれどあの人間は本当に強かった。僕の剣術もあの人間を見て、そして教えられて覚えたものだったから。
「フン。今度はしっかりと僕の命令を実行しなよ」
「……は、……はい」
消え入りそうな声で無能な部下は答えた。声を出せるってことはまだまだ元気そうだ。これならもっと痛めつけても大丈夫かもしれない。だけど残念ながらこれから行かなければならない場所がある。
「じゃあ、早速船を用意して。稲妻に行く」
稲妻。因縁の地であり、はじまりの地だ。あの神が治める国。
――ばかばかしい。何もせずにこもっているあの女に国を統治させるなんて全くバカげた話だ。ファデュイが深部まで入り込んでいることに気づかないで将軍サマとやらの命令を忠実に実行しようとする幕府軍の連中も。そんな無能な幕府と争っている抵抗軍とか言う大層な名前を掲げた連中も。愚か者達がよってたかって笑えるね。
まるで三文芝居や茶番劇だ。グズが何人集まってもできることは何もないのに。そうやって大義名分とやらを掲げて無意味な戦いを繰り広げていればいいさ。その間に僕は僕の望みを叶えるまでだ。
「……、」
歩き出そうとしたその時、無意識に笠に手を触れて咄嗟にいつかのあの人間の笑顔がよぎった。それはもう何年も、何百年も前のことだ。
……あの人間はもう死んでいるんだろうな。結局名前も知らないまま、あいつの笑顔だけが頭に残っていた。
設定とあとがき
「――こんなこともできないなんて、いったい今までどうやって生きてきたんだか」
一番簡単な任務をこなすこともできずに帰ってきた部下を躊躇いなく蹴り上げた。こんな役立たずの部下を持ってしまうなんてついてない。腹が立って足が出てしまったがその労力すら勿体無いと思った。でも、この憤りを解消するためには多少の無駄遣いも仕方のないことだ。グズで間抜けな使えない部下を持つと上司は大変なのだ。
「僕の決めたことも守れないなんて、本当に使えないな。お前にもわかるように簡単なことを命じてやったのに、それすらもできないなんて、よく僕の前に出てこられたね」
怯えた顔だけは一丁前にできるくせに、任務ひとつまともにこなせないなんて恥ずかしくないのだろうか。殴る手がもったいないが表情が顔に出るやつは見ていておもしろい。それは僕には持っていないものであり、コロコロと変わる表情はあの人間を思い出すから。もっともあの人間に危害を加えたことなど一度もない。驚いた顔を見せたと思えば笑っていてと喜怒哀楽が激しくて弱そうに見えるのに、僕が何をしようとものらりくらりとかわしていた。あの人間の強さはきっと今まで見た中でも一、二を争うような強さに思える。それは僕が戦いというものを初めてしっかりと見たのはあの人間の姿だったからというのもあるのかもしれない。思い出補正ともいえるかもしれない。けれどあの人間は本当に強かった。僕の剣術もあの人間を見て、そして教えられて覚えたものだったから。
「フン。今度はしっかりと僕の命令を実行しなよ」
「……は、……はい」
消え入りそうな声で無能な部下は答えた。声を出せるってことはまだまだ元気そうだ。これならもっと痛めつけても大丈夫かもしれない。だけど残念ながらこれから行かなければならない場所がある。
「じゃあ、早速船を用意して。稲妻に行く」
稲妻。因縁の地であり、はじまりの地だ。あの神が治める国。
――ばかばかしい。何もせずにこもっているあの女に国を統治させるなんて全くバカげた話だ。ファデュイが深部まで入り込んでいることに気づかないで将軍サマとやらの命令を忠実に実行しようとする幕府軍の連中も。そんな無能な幕府と争っている抵抗軍とか言う大層な名前を掲げた連中も。愚か者達がよってたかって笑えるね。
まるで三文芝居や茶番劇だ。グズが何人集まってもできることは何もないのに。そうやって大義名分とやらを掲げて無意味な戦いを繰り広げていればいいさ。その間に僕は僕の望みを叶えるまでだ。
「……、」
歩き出そうとしたその時、無意識に笠に手を触れて咄嗟にいつかのあの人間の笑顔がよぎった。それはもう何年も、何百年も前のことだ。
……あの人間はもう死んでいるんだろうな。結局名前も知らないまま、あいつの笑顔だけが頭に残っていた。
設定とあとがき