ワルカからやってきた三人組
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それからしばらくして、蛍の前にはなまえとダインスレイヴ、そして小さなアランナラがいた。
「……それで、この……「アランナラって言うんだって」……、そのアランナラと一緒にいるってこと?」
言葉を詰まらせた蛍に対してなまえはその小さな友人について教えた。思わぬ同行者に戸惑う蛍。まさかこの地の生き物と同行する事をダインスレイヴが許すなんて……と思ったが彼は甘露甘海で花霊やこの地の人々と共に剣をとっていたらしい。だから意外なことではないかもしれないと思い直した。
「うん、そうだよ。話を聞いてみたらどうも私達の旅と関係がありそうだから。ね? ダイン」
「俺は何もしていない。なまえ、貴様がここに連れてきたのだろう」
「えっ……、許してくれたんじゃないの?」
「俺は何も言っていない」
「そ、そうだった……? 一緒に戦ってくれたから許してくれたとばっかり思っていたのに……」
てっきりなまえの言葉に同意してくれると思いきや、そんなことは全くなかった。その事実をダインスレイヴ本人から告げられてなまえはショックを隠せなかった。
「……」
「なまえ……、何でもかんでも拾う癖治そうね」
ダインスレイヴのまさかの裏切り行為にショックを受けているなまえに蛍も眉尻を下げて一言、苦言を呈した。
「蛍までひどい……」
2人とも今日は何だか厳しい……といじけるなまえ。何も言わないが内心呆れた様子であろうダインスレイヴ。そして、そんななまえに「沈んでいるのか? ナラなまえ、よくわからないが元気を出せ」と声をかける小さなアランナラ。三者三様の様子を見ながら蛍は息を吐いた。それはなまえに呆れていたというわけではない。今朝見た夢について彼女はずっと引きずっていた。兄の姿を夢で見ただけで涙を流してしまう。それほど蛍の中で兄の存在は大きい。だって、2人はその血を分けた肉親なのだ。当然である。大事な大切な家族なのだから。
兄の夢を見ると思い出すのはカーンルイアのこと。ダインスレイヴの故郷であり、蛍が兄と別れさせられた場所。そして、神の手によって消された、国。
「……」
兄を想うと嫌でも思い出してしまう。自身の罪を。ずっとカーンルイアでの出来事を引きずって気持ちが沈んでいた。一つの国の終焉を見届けた。滅びゆく国の姿、そう簡単に吹っ切れるものではない。
でも、四六時中その事を引きずってばかりはいられない。蛍には目的がある。兄を探す。様々な経験をしてきたけれど、これだけは変わらない。何があっても、優先しなければならない事。なまえがそばにいるのは不幸中の幸いなのかもしれない。カーンルイアでの混乱の中、兄同様になまえとも逸れてしまったけれど無事に再会することができた。砂漠ではぐれてしまった時は本当に焦った。もう、……失いたくない。
突然現れた万種母樹のおかげで見つけることができて本当に良かった。そこでダインスレイヴとも再び会えた。それからは三人で旅をはじめた。その旅の途中でも蛍は兄の夢を見る。そして、同時にカーンルイアの悲劇を思い出し、心が沈んでいる。これは蛍がカーンルイアの姫と呼ばれ、無関係ではいられなかったからだ。
しかし、それをなまえやダインスレイヴには話さなかった。その代わりに気持ちを切り替えるためにそっと息を吐きだした。なんだかんだ言って宮廷親衛隊の隊長であったダインスレイヴは面倒見がいいし、なまえは蛍のことをよく知っている。己から2人の気を逸らせるためにも、自身の気を紛らわせるためにもなまえが連れてきたこの拾いものはちょうど良かった。
「それで……この子? は私たちに何かして欲しいことがあるの?」
「あ、それなんだけどね。……うーん、なんかワルカからきた……えっと」
アランナラの事をなんと表現すべきか迷いながらも口にした蛍の疑問になまえが答えようとするが、アランナラの言葉は難しくて言い淀む。それに助け舟を出したのはアランナラ自身だった。
「ワルカから来た大きな鉄の塊。ボクのアランラカラリはまだアランダーシャの半分にも満たない。だからボクでは倒せない。ナラ達に助けてほしい」
「……」
「ワルカというのはおそらく砂漠のことだろう」
たしかになまえが言い淀むのも無理はない。独特の言葉遣いに蛍も眉を顰めた。それを単語の意味がわからないと受けとったダインスレイヴとなまえがアランナラの言葉の意味を教えてくれる。
「砂漠?」
「ああ、つまりこの生物は俺たちに砂漠から来たその鉄の塊とやらを倒すのに協力してほしいようだ」
「鉄の……塊」
「うん、それでナラって言うのは私たちのことみたい」
蛍の元に戻ってくるより前からこの小さな生き物と一緒にいたおかげなのか、ある程度話を理解できるようになっていた2人が蛍にわかりやすく伝える。おそらくここに戻ってくるまでの道中でなまえがアランナラに話しかけていたのだろう。
「千樹の王がサルバに帰ってからマラーナが現れた。マラーナはよくないモノ。でもマラーナよりもメガトン大鉄塊の方が今は大きな問題」
アランナラは現在の状況について思っていることを3人に話してくれた。
「大鉄塊はナラダインとナラなまえが倒してくれた。だから次はメガトン大鉄塊。その前に小さい方の金色のナラと合流がいると聞いたから一緒に来た」
「そうなの。このアランナラのいう大鉄塊はここに来る途中だったからダインと一緒に倒したんだけど、メガトン大鉄塊? まで行ったら蛍が心配しちゃうかと思って、合流してからってことになったの」
「そうだったんだ。……」
2人と1匹? がこれまでの経緯を話してくれたおかげで蛍も現状を把握することができた。
「それなら、早くその大鉄塊を倒さないとね」
次の目的は固まった。当面はこのアランナラと共に行動することとなり、3人はこの拠点を引き払う事にした。