ワルカからやってきた三人組
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しばらく森の様子を確かめながら歩いていたがなまえがふと思い出したように話を蒸し返した。
「ねえダイン……、さっきの話だけどさ、私が方角に弱いおかげでダインと再会できたんだから、一概に悪いことではないと思うんだけど」
突然、甘露花海での出来事を引き合いにだしてきたなまえにダインスレイヴはため息をついた。甘露甘海で再会した時、すでになまえと蛍は合流していた。ダインスレイヴがズルヴァーンや片腕の賢者達と共闘後に2人に落ち合えたのは荒野でなまえと蛍が逸れてしまったことがそもそもの原因だったらしい。
砂ばかりの荒涼としたあの地は方向感覚を見失いやすい。方向音痴ならなおさらだ。だが、ダインスレイヴ達が万種母樹を復活させたことで目印になったようだ。なまえ曰く、お互いにはぐれてしまったが巻き上げる砂嵐のせいですっかり蛍を見失ってしまったという。だからわかりやすい目印である万種母樹の光に向かって歩いたらしい。きっと蛍も目指してくれると信じての行動であった。
万種母樹に最初に着いたのはなまえの方だった。そこでなまえはダインスレイヴと再会した。彼はすっかりなまえの中で死んでいる者とされていたらしく、ダインスレイヴの姿を見て感極まったなまえに泣きつかれた。その時は流石に驚いた。彼と共闘していた他の者たちにも突然現れた少女が泣き出したことは驚きをもって迎え入れられて、苦しかった戦闘の余韻が良い意味でぶち壊された。良かった良かったと繰り返しながら泣きつくなまえの声で、賢者をはじめとして生き残った人々や花霊達も災いを抑えたことをようやく実感して皆脱力したことも記憶に新しい。
その少し後で同じように突然現れた樹を目印に歩いてきた蛍も合流して、ダインスレイヴは彼女らと旅をするために一応異変の収束を見せた甘露甘海を去る事にしたのだ。ちなみになまえは逸れた事について、蛍にこっぴどく叱られていた。そんな事を思い返しながら、ダインスレイヴはなまえに返答する。
「そんな幸運が毎回続くわけではない。それに貴様はあの後、蛍に1人で行動するなと言われていただろう」
「う……よ、よく覚えてるね……」
「彼女があれほど激昂するところを見たことがなかったから印象に残っているだけだ」
「だ、ダインは蛍みたいに怒らないでね」
「……貴様の行動次第だな」
あの時の蛍を思い出したのか怯えた態度をとったなまえからのお願いにダインスレイヴは先ほどよりも大きくため息をついた。ダインスレイヴの態度を見て、気まずそうになまえは笑う。そんな気まずい空気を払拭させようと彼女は話題を変えることにした。
「あ! それはそうと、ダインが来るまでにこの近くは調べておいたよ!」
ダインスレイヴを待っている間になまえは森の入り口付近を既に調べ終えていた。本来の入り口からではないところから入ったためにできたことで、これもある意味方向音痴の賜物だった。しかし、そのことを話すとややこしくなることはわかっていたし、特に変わったこともなかったので空の様子を見ていたと彼に伝えるだけに留めた。そして森に入り、二人は調査を開始した。だがそれはすぐに結果が出るものではない。結局ここでも手がかりらしい手がかりは見つけることはできなかった。主になまえがダインスレイヴに話しかけながら二人は森の中を歩き回る。
「ねえねえ、ダイン。さっき、通りすがりのレンジャーって名乗る人たちに会ったの」
その話の中でなまえは先ほど出会ったレンジャー達に教えられた危険についてダインスレイヴに伝えた。
「初対面なのに私のことを心配してくれたの。テイワットの人も悪い人ばかりじゃないのかな……」
「……」
それから彼らがなまえのことを心配してくれたことも。ポツリと呟いたなまえの言葉を、肯定も否定もせずにダインスレイヴは黙ったままだった。彼が何も答えないということは何となく予想できていた。なまえも何も言うことなく、しばらくして彼女は話題を変えて話を続けた。レンジャー達が忠告してきたように凶暴化したキノコンを退けながらも2人は共に森の奥へと進んでいく。しかし、やはり目ぼしい収穫はなかった。そんな時だった。
「……あれ?」
なまえが何かに気づいたのは。
「どうした」
「ねえ、ダイン……あれ、何かな……?」
なまえが指し示した方角をダインスレイヴが目で追った。そして「それ」と目があう。
「!!」
「「……」」
2人に見られていると認識したのか「それ」は慌てて姿を隠した。なまえの膝丈ぐらいだろうか小さな……可愛らしい、頭に葉っぱのような物を乗せた生き物。緑色なのは保護色なのだろうか。
「知らん。固有生物の一種だろう」
「へー、この世界っていろんな生き物がいるのね。ズルヴァーンも小さくて可愛かったよね」
その謎の固有生物は木陰から少しだけ顔を出してこちらを見ている。ダインスレイヴは敵意の有無しか興味がなかったので早々に興味を無くした。だがなまえはその可愛らしいフォルムもあって、興味津々だ。
「攻撃してこない限りは放っておいても問題はないだろう。……ここには手がかりはないな。先へ進むぞ」
「えー……」
チラチラと謎の生物に視線を向けているなまえを嗜めるようにダインスレイヴは彼女を促した。難色を示すなまえにダインスレイヴは何も言わなかった。ただ真っ直ぐになまえを見る。無言の答えになまえは負けた。
「……ちゃんと着いていくからそんなに睨まないでよー……」
置いて行かれたら道に迷うことは目に見えている。そうしたらダインスレイヴだけではなく蛍にもまた怒られることは明白だ。なまえも渋々歩き出した。
「……」
そんな2人の様子を見ていた謎の生物……基、アランナラは隠れていた草の陰からそっと姿を表した。そして追いかけるようにしてぽてぽてと2人の後に続いた。