ワルカからやってきた三人組
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森は静かだった。しかし、ここにも災いは飛来していて、その爪痕はそこかしこに見て取れる。その中から怪しい痕跡を探し出すのは少しだけ大変だ。花海のある砂漠からなまえがいるこの場所まで距離はあると思っていたからそれほど被害はないと思っていたが、それでも所々に災禍の痕跡が見受けられた。その原因が別の場所からの物だという可能性があったことをその時のなまえはまだ知らなかった。
砂漠にいる時は目にすることのできていた万種母樹の姿も、もう見ることはできない。荒涼としたあの砂漠やオアシスとも呼べる花海を懐かしく思いながら、緑ばかりが目につく道を森に向かって歩く。
その途中で巡回していると言うレンジャー達に出くわし、森への道を尋ねるとヒルチャールの数が増していること、そして森の様子がおかしいことも教えてもらった(森への道は逆だと言われたことはもちろんなまえだけの胸にしまった)。彼らが言によると、なんでも死域というものが出現し、森はある種の病に侵されているらしい。
「空が暗くなって、見慣れない魔物も増えたんだ。キノコン達も凶暴になっている」
「突然あの暗かった空が元に戻ったけど、マハールッカデヴァータ様のお力だったのだろうか。そういえば教令院から砂漠へと何人か派遣されたと噂もあったが……」
この国の民は余程神への信頼が厚いらしい。空が明るさを取り戻したことをマハールッカデヴァータの功績だと言うが、彼女だけの力ではないことをなまえは知っていた。けれども真実がそうであろうとも違っていても、それは彼らになまえの口から話すことはない。ただなまえの心配をしてくれるレンジャー達の忠告を受け入れて、その気持ちに感謝を述べた。
そんなふうに助言を受けてレンジャー達と別れたなまえは気を引き締めて教えてもらった方向に進む。そのまま素直に進んでしばらくすると、森が見えてきた。そしてなまえはその近くを調べてみることにした。
―――
――
「……」
ダインスレイヴがなまえを見つけた時、彼女は森の入り口付近に腰掛けるのにちょうど良い石の上に座っていた。ぼーっと空を見上げて呑気なものである。
「――なまえ」
「あっ、ダイン! 蛍はまだ寝てた?」
ダインスレイヴが呼びかけるとなまえは立ち上がった。彼に反応を示して、石から飛び降りて走り寄ってきた。
「ああ、目は覚ましたが少し疲れていたように見えた。貴様が先に森に入ったから休むように言って置いてきた」
「おい、て……? えっ!?」
ダインスレイヴの簡潔な言葉になまえは眉をひそめたと思えば、彼の言葉をしっかりと理解して大げさなほどの驚きを見せる。
「ええっ、女の子を一人で置いてくるなんて……」
「貴様も女だろう。……それに蛍は一人でもなんとかできる実力はある」
絶句したなまえにダインスレイヴはすぐさま言葉を返した。彼の仲間は二人とも少女である。彼女ら二人が別行動すれば、そのどちらかは一人になるのだから、なまえの驚きはおかしい。それにダインスレイヴだって、一人で置いておくのに不安な人間を放置するなんてことはない。国民を守ることが誇りだった彼がそんなことをするはずがないのだ。
蛍をその場に残してこちらに来たのは彼女に対する信頼からのものであり、彼がかけた言葉は目の前のなまえを落ち着かせるためのものでもあった。そのおかげでダインスレイヴの言葉の意味を理解した。
「まあ、蛍はしっかりしてるし……、って。ちょっと待ってダイン、それじゃあ私の方が蛍より頼りないってこと?」
「方向に関してはそうなるな。貴様だって自覚しているからこそ、ここで俺を待っていたんだろう」
「んー……、そうなんだけど……なんか納得がいかないなあ」
「貴様の思考など関係ない」
きっぱりとなまえに言葉を返したダインスレイヴの様子に彼女はため息をついた。
「……もう少し柔らかい言い方できないの?」
「俺にそのようなことを求める方が間違っている。とにかくなまえ、貴様は俺のそばから離れるな。探すのは手間だからな」
そんなふうに旅仲間ゆえの軽口を交わしながら2人は本題の調査をすべく森の中へと足を踏み入れた。